日向市キャリア教育支援センター ブログ

2026.10.14

室蘭キャリア教育シンポジウム

 先週、北海道室蘭市のキャリア教育シンポジウムに参加しました。北海道の10月はさぞ寒いだろうと覚悟をして向かったのですが、気温は日向とそれほど変わらない3日間でした。長い報告ですがお付き合いください。

 

シンポジウム当日の午後、開会セレモニーは商工会議所会頭の挨拶に始まり、すぐに講演になりました。基調講演のテーマは、「学校と地域・企業をつなぐキャリア教育の仕組みづくり~産学官親の連携が創る新しいキャリア教育~」であり、1人目が私です。

 私は、「『自分軸』をもった生き方を育む日向市キャリア教育の取組~「4つの力」の獲得を目指して~」という演題でお話をしました。実は、室蘭市は本年度からのキャリア教育センターの立ち上げに当たって、昨年度日向市に視察に来られていました。その縁があり、今回講師に呼んでいただいたという経緯があります。私の話は、日向市民にとっては日常的にこのブログでお知らせしているような内容です。「よのなか教室」や「14歳のよのなか挑戦」をキャリア教育の中核として位置づけ、それに事業所がどのように関わっていくのかという一連の仕組みについては、今から始まる自治体には参考になるのではないかと自負します。日向市のこれまでの13年間の経緯と現在の取組について、コンパクトにまとめてお話させていただきました。

 

 

 2人目は、一般社団法人キャリ・ラボ291(フクイ)代表理事 山村直主(なおゆき)氏の講演です。

 演題は「地域で人を育て、地域の未来をつくる~学校・企業・地域をつなぐキャリア教育の仕組みづくり~」です。これからキャリア教育に取り組み始める自治体では、日向市のように行政からのサポートが受けられない場合もあることを理解した上で法人化したセンターを立ち上げようとする方向性もあります。福井市でも山村さんが率いる会社がキャリア教育を牽引しておられます。

 

 福井市では、企業におけるキャリア教育として、KIYOKAWA工業(株)での人材育成の先行事例を紹介されました。大人も学ぶ企業の探究型教育を推進しているそうです。時代は企業の社会的責任CSRの時代から共通価値の創造CSVの時代へ変化していることは勉強になりました。以前から企業は社会に積極的に貢献するということが求められていましたが、現在は、CSVとして企業も社会(市民、子ども)も同時に価値を高めていくという取組が重要になるということです。つまり、CSVで「向き合うべき課題を自分事化する」ことが一人一人に求められるという訳です。

この事例としてKIYOKAWA工業(株)の一人一人の社員に「個人パーパス」を作成させる取組を紹介されました。入社時の目標から5年後、10年後にそれぞれの自分の位置から将来を描く(言わば、「キャリアパス」:注;山之内)を更新させていくという取組です。具体的には、新入社員が、当初は社内でのキャリア発達を目指したパーパス(目標)が、日向市で言うところのよのなか先生などの経験を経て、年数と共に変化し、社会貢献を意識するようになって、現在は市内小学校のPTA会長として尽力する位置に高まったということでした。この関係から本人の「個人パーパス」が更新されていく過程を紹介されました。企業の社員に深くキャリア教育を浸透させている福井市の取組を興味深く聞かせていだたきました。

 

山村さんは「キャリア教育の地域の5つの意義」を以下のように提示されます。①次世代の人材を育てる ②関係人口をつくる ③経営課題を見直す機会になる ④社員自身の成長 ⑤地域の未来をつくる。

これらは日向市のキャリア教育推進における意義と一致するものが多くあります。私は特に、4つ目の「社員自身の成長」について山村さんがこれは「キャリアの棚卸し」になると言われたことが印象的でした。社会人講師として学校で子どもたちに関わることで自分自身のキャリアを見つめ直し、自分こそ成長できているのかを確認することに繋がるのでこういう表現をされたのだと思います。ご本人に「日向でも使わせてもらいます。」と承諾を得ましたので活用させていただきます。

 

長くなるので福井市の取組について後は簡単に紹介します。

 「キャリアドリフト型」を2020年から取り入れていること(キャリアを決めつけず、柔軟に対応していくこと)、ポータブルスキル(基礎的・汎用的能力、社会人基礎力;これは日向市と同じ)など、流石に時代の先取りをされています。また、福井市キャリア教育プログラム事業の仕組みとしては、現在福井市の「認定キャリア教育コーディネーター」(経産省)取得者14名全員が市内企業の社長である点は驚きでした。山村さんと別席でお話した際に、学校へアプローチするには「教育に精通していることを示す肩書が必要だから」だそうで、そこから積み上げていく姿勢に熱量の大きさを感じました。さらに、これはとても大事な視点なのですが、学校の教育目標を実現するためにキャリア教育の力を活用するという姿勢を明確にすることで、あくまでも福井のキャリア教育は学校教育の一環として位置づけていることを学校に印象付けることでは成功していると言えます。「福井にある資源を一つずつ教育に」のキャッチフレーズのもとに広くそして確かにキャリア教育を展開されていることがとても刺激になった講演でした。

 

 続いてパネルディスカッションに移りました。

 全体進行としてのモデレーターに室蘭工業大学特任教授/キャリア・サポート・センター長である相津佳永氏、そして室蘭工業高校長の菊池裕幸氏、白蘭学園校長の松岡賢晃氏、桜ヶ丘幼稚園理事長の杉山英子氏、PTA連合会長の春木一喜氏、登別室蘭青年会議所理事長の吉田鉄矢氏、室蘭商工会議所委員長の今野香澄氏の計7名が登壇されました。

 4つのテーマでの議論となりました。以下1つずつテーマに沿って簡単にお知らせします。

①今の子どもたちは、室蘭とつながっているのか。

  ・幼児期には世の中に色々な人がいて色々な仕事があることを知ることが子どもたちの可能性を広げていくことになる。・自分も地域の一員として関わりたいというところまで小中9年間の学びをつないでいくことが学校の役割になる。・高校ではM-Conと言われるコンソーシアムの仕組みを構築し、結果として地元企業に就職する割合が増えた。・保護者が地域の企業や仕事を知る機会を増やすことが大切である。・企業がもっと前面に出て、地域の魅力を伝える必要がある。・室蘭は「鉄の町」として知られているが、実際には地域の企業がどんな仕事でどんな技術をもっているのかというところまで知られていない。

 ②地域ぐるみで育てるとは、誰が何をすることか。

  ・室蘭の「子ども未来指針」として学校だけではなく地域の力を学校の中に取り入れていくことが重要だ。・高校でも実社会との結び付きをよりリアルな「自分事」として実感できるようになることが大切である。・企業が日常の中で子どもたちとつながる場面を増やす必要がある。・幼児期にこそ実体験を積み重ねることで知的好奇心が満たされるので、本物にたくさん出会わせていく経験が必要だ。

 ③室蘭キャリア教育センターは何をするべきか。

  ・学校と社会をしっかりつないでほしい。・人と人、学校と企業、学校と地域をつなぎながら、室蘭全体で子どもたちを育てる仕組みをつくっていただきたい。・地域や企業との横のつながりと校種を超えた縦のつながりがセンターの役割だと期待する。・企業が協力したい時に気軽に相談できる役割を担ってほしい。・室蘭の企業や仕事についての情報発信を継続的にすることが重要である。

 ④明日から何を始めるか。

  ・幼稚園では小学校との連携を密にするようにする。・義務教育課程において、自分は地域の役に立てるという自己有用感を育てたい。・高校では今後のコミュニティ・スクールへの移行に合わせて、地域とともに歩む持続可能な学校づくりを進めたい。・PTA連合会として、地域の仕事やキャリア教育の情報を保護者につないでいく。・青年会議所として、企業見学や働く大人の話を届ける機会を継続し、子どもたちが大人のリアルに触れる機会を充実させる。・SNSなどを活用し仕事を知ってもらう情報発信は有効である。

 

議論のまとめとしては、「子供は地域の未来そのもの」「誰かに、どこかに(キャリア教育を)任せない」「共に地域が連携する」このことを全体確認し、同時にシンポジウムも閉会しました。

今回、遠い室蘭まで呼んでいただき他地域のキャリア教育推進について学んだことで私のキャリアは確実に向上したと思いますが、室蘭にも何らかの視点を差し上げることができたのなら幸いです。また、シンポジウムで得た私の課題は、日向市の子どもたちにいかにキャリア形成を促すか、そしてそれはどのような形で子どもたちの成長に蓄積されたのかをしっかりと把握することが大切だと改めて実感しました。その上で、子どもたちが確実に日向市を支える存在に成長できることを把握していくことが責務であると痛感します。それは子どもたちが市内に留まることのみを目指すのではなく、外からも確実に日向市を支える大人に成長してもらえるように、さらにキャリア教育の重要性と確かな教育への浸透を図っていきたいと思います。

 

 冒頭で日向市と変わらない気温だと書きましたが、室蘭市内の至る所でナナカマドの紅葉が始まっており、3日間がたまたま高い気温だったのだと思われます。帰路夕方、日向市駅(日向坂46駅:期間限定)に降り立つとまだ暑い中、翌日からの十五夜祭りへ向けた舞踊隊の練習が佳境を迎えていました。南北に長い日本列島はやはり大きな気候の違いがあることを感じつつ、キャリア教育の熱量はどの地域でも熱く上昇していると肌で感じた出張となりました。室蘭市の皆様、大変お世話になりました。共にキャリア教育の推進を頑張りましょう。(室蘭市の方々もこのブログを読んでくださっています。)

2026.10.13

環境学習出前授業~日知屋東小学校4年生

 環境保全に関する5Rをご存知ですか。3Rは有名ですが、5Rとなると私も即答にとまどってしまいます。3R:Reduce(リデュース): ごみ自体を減らす、Reuse(リユース): モノを捨てずに繰り返し使う、Recycle(リサイクル): ごみを資源として再利用(再資源化)する。この3つに工夫としての、Refuse(リフューズ): ごみになるモノを断る(レジ袋をもらわない等)、Repair(リペア): 壊れたモノを修理して長く使う、の2つを加えたものが5Rになります。

 その昔は「リサイクルショップ」なる言い方で通っていましたが、現在の中古品店の多くは「リユースショップ」と明確に区別している点でも方向性を明確にしていることが分かります。

 

 

 さて、日知屋東小学校4年生では、総合的学習の時間に環境学習を行っています。先週、イオン日向の宮田恵理子様が出前授業をされましたので見学に行きました。

 

 昨年のこのブログでもイオン日向の取組については、宮田さんの授業を紹介しましたが改めて紹介したいと思います。

 イオン九州では、ゴミの削減を目指して様々な取組を行っているとのことで、繰り返し使用できる運搬用の「リターナブルコンテナ」や客が使用する「イオンマイバスケット」が顕著です。宮田さんがマイバスケットの紹介をされると、担任の先生がすかさず出して見せられ、ご自分も所有しておられたところは流石に東小4年の担任だと感服した次第です。

 

 また、イオン九州全体340店舗では、1年間のレジ袋(3~5円)の売り上げは4609万円にも上るということで、まだまだ使用しないで済むような取組をしなければならないと気合十分でした。ちなみに、この売り上げは全額店舗のある自治体(県)に寄贈されるそうです。

 イオン日向店でのマイバッグ使用率は78%ということで、県平均77%をほんの少し上回っており、日向市民の努力が見えてきます。

 

 5Rの取組の中でもリサイクルについては特に力を入れて取り組んでいるということを分かり易く伝えていただきました。イオン店舗には、ペットボトルやアルミ缶、瓶などの回収ボックスが設置してあり、日向店だけで月間、ペットボトルが500kg、牛乳パックが120kg、アルミ缶が300kg、瓶が80kg、トレーが40kgと膨大な量が回収されていることが分かりました。4年生にとって、ペットボトル500kgを想像するのは少し難しいかもしれません。というのも、4年生で体積については直方体や立方体の概念を習うのみですから、質量に換算して想像することは難しかったかもしれません。それでも宮田さんが「こんな軽い1本のペットボトルが500kgもあるから相当重いよね。」と言葉を変えて伝えられると、納得する児童も増えてきたようです。

 そのほか、生ごみから肥料を作り出し、自前の農場でその肥料を使用して野菜を生産するというリサイクルループの仕組みを作っているイオンの取組も紹介されました。名称は「イオン完結型食品リサイクルループ」というそうです。先日、孫を連れて財光寺のホームワイドに犬を見に行った際に、宮田さんが紹介されていたリサイクル堆肥を探しましたが見当たらず残念でした。また次回探したいと思います。

 

 宮田さんが大分県環境整備産業に関する施設を訪問された時の様子を紹介されました。産廃リサイクル工場では、通常は埋め立てるはずのゴミを85%リサイクルしていることや、古紙飲料容器リサイクル工場では古紙としての容器が月間50tにもなること、そして、食品リサイクル工場では、残渣(さ)を3次発酵させ、さきほど私が探せなかったと言った堆肥にする過程も紹介されました。児童は新しく知る事ばかりで興味を示し、集中力を切らすことなく必死にメモを走らせていました。

 

 「MOTTAINAI」というワードが世界へ向けて発信できている時代になっているようです。「混ぜればゴミ、分ければ資源」この言葉が納得できる1時間の授業でした。

 

 授業前に校長室にて宮田さんと色々話しました。その中で、「よのなか挑戦」に来た中学生のお話がありました。初対面時に態度が悪かったので宮田さんが厳しく注意されたそうです。すると生徒は態度を改め、最終的に3日間を無事終了することができたそうです。それは、学校を訪問し授業をした時も同じ状況が展開されたそうで、宮田さんいわく、「どの学校の生徒もきちんと叱られていないと感じました。さらに、日常の慣れあいから先生に対しても甘えていることを感じました。」とのことです。私の場合は学校の現状を知っていて先生方の裏側のご苦労を察し、そのまま通した授業をしましたが今後は改めなければならないのかもしれないと考えたところでした。こうして、「日向の大人が先生」になっていただいていることに改めて日向市のキャリア教育の広がりと、実際に携わっていただいている方々への深い感謝の念を実感した次第です。

 

 日知屋東小4年生からの質問では、「イオンは停電した時はどうするのですか?」「自家発電がありそれを使います。ただ、以前停電した時はレジが使えず、電卓で計算しましたよ。」と興味深い問答になりました。また、「リサイクルされた服はどうなりますか?」には、「ボックスで集めて外国へ出すことになります。」など、児童の学習意欲の高さが伺えました。

 

 今回は2組まで見学することはできませんでしたが、日知屋東小4年生の環境保全に対する関心の高さを知ることができて良かったと思います。一方で、小学生の学習を見学するだけではなく自らも率先して分別していかなければならないと感じました。早速、月曜朝のゴミ出しでは、プラスティック袋にくっ付いている紙切れの細かなものを取り外して分別しました。その時、脳裏に蘇った言葉が「混ぜればゴミ、分ければ資源」でした。

 

 次世代により良き地球環境を引き継ぐためにも大人が率先してゴミ問題に取り組まなければならないと新鮮な学びを得たので、こういう学習機会は何回あっても良いと感じました。

 宮田さんは日向市の子どもたちのために環境学習をいつも積極的に実施していただいております。常に新しい情報を組み込んでいただき勉強になることが多いです。本当にありがとうございました。

 

2026.10.06

よのなか教室~大王谷学園7年生その3

 大王谷学園7年生よのなか教室での3番手、芥川彩様をご紹介します。以前、平岩小中学校で講師をしていただきブログでも公開しましたので、今回は簡単に紹介します。

 

 今や日向市内の各ショップで見かけないことはないというくらいの「©あやべこ」グッズの作者です。今、市内と言いましたが、市外、県外でもグッズが置いてあるところがあるとのことでどんどん拡大しているようです。

 道の駅日向では、土日にオープンしているカフェがあり、私はよく平日の休みを利用して宮崎へ向かっているのでなかなかかカフェにお目にかかれなかったのですが、先日土曜日に道の駅に行った際には、カフェでコーヒーをいただくことができました。紙芝居の枠みたいな小さな窓でやりとりするので可愛く、面白いです。

 

 さて、芥川さんが少年時代にはピッチャーとして明けても暮れてもソフトボール漬けだったことは以前のブログで紹介しました。また、銀行に就職されていたことが、その後のご自分の商品拡大において市場経済の知識が役に立つ経験にもなったそうです。

 

 そういう経緯を経て独立したイラストレーターとして才能を発揮され、ご当地キャラクターの愉快な仲間たちが「増殖」し続けている楽しいイラストを考案されつづけています。

 そんな芥川さんの「4つの力」をここで再度紹介します。

 「相手を尊重し、社会を理解する力」として「自分から挨拶をすること。笑顔でいること」です。また、「自分を正しく知り、コントロールする力」では、「自己分析をすること。『好き』を見つけること。前向きな考え方をすること」になります。さらに、「課題を見極め、解決の工夫をすること」は、「聴く力」が大事だと言われます。すなわち、課題にぶつかった時は一人で考えこまず周りの人に相談することを大切にしているそうです。そして最後の「働く意義を知り、将来を切り拓く力」では、「ます『知る』こと」だと仰いました。何事もよく理解してから次に進むということの大切さを説かれました。

 

 よく「笑顔が大事」とは言われますが、それを地で進む芥川さんは、本当にいつも笑顔でニコニコと対応され、言われている言葉に説得力があると感じたのは生徒も同じことだと思います。言葉だけではない大人の「自分軸」を感じる瞬間だったのではないかと思われます。

 

 最後に芥川さんが「今日から頑張って欲しいこと」として、やはり「笑顔」を真っ先に挙げられ、その次に「『好き』を見つけ、広い世界があることを知り、夢中になれるものを探す」ということを生徒にアピールされました。

 

 生徒のメモには、それらの言葉がびっしりと書かれていいましたので、自分を振り返る時間には参考となる言葉を選べたと思います。

 こうして、生徒の身近なところに華やかなイラストレーターなる仕事人が実在し活躍されていることを生徒は実感をもって受け入れることができたのではないかと思います。そういうお仕事の方が才能あふれる華々しい道を歩んできたのではないこともお話から伺え、結局、道を切り拓くというのは、芥川さんの言われる状況をよく「知る」ことから始まるということを学んだと思います。今自分は何をしたいのか、その道へ行くにはどう動けばよいのか、そういうことを考え、人を頼って一歩ずつ進んでいくことでどんどん大きな道が拓かれていくことを話していただきました。

 さすがに学校も2校目になると余裕をもって話されていると感じました。今後もお忙しい日々が続きますが、時折こうやって生徒へ向けて、またお話をしていただければ幸いです。本当にありがとうございました。

2026.10.05

よのなか教室~大王谷学園7年生その2

 9月24日の大王谷学園7年生でのよのなか教室2番手は、(有)悟空 マンガ倉庫社長の甲斐悟様です。以前、このブログにも登場していただきましたが、今回は中学校でのよのなか教室ということで改めて紹介します。

 

 甲斐さんの「人生グラフ」を見ると、紆余曲折を経て現在に至るまでに上り調子で来られたことが分かります。少年期はサッカー漬けの毎日で青春を過ごされ、就職へ向けては「とりあえず」でかわして来られた世渡りだったことも伺えます。この会社を立ち上げられたのは岐阜県が最初で、その後日向へ移転されました。それから関西にも出店され現在に至るとのことでした。マンガ倉庫と言えば多くの中学生がお世話になっているかもしれません。私も実はカメラのガチャガチャが好きで時折通っております。

 

 

 会社の理念として、「勿体ない」の思いをモノだけでなく文化も次の世代につなぐ使命をもっているとされています。確かに現代の物価高のご時世にあっては、なかなか新品に手が出しづらくなっている感じもあり、ケータイ(スマホ)も中古品がよく売れているとニュースで聞きました。「リユース」という概念が文化をも包含して時代を形成していることを実感します。「商品を見極める力や魅力的に見せる工夫をして資源を大切にしながら人々の暮らしを支えています。」と言われることは正にその通りだと納得した次第です。その具体的事例として、現在のUFOキャッチャーには卵やパイナップルといった食料品もあるとのことでした。

 

 仕事のポイントとしては「中古品は鮮度が大事!」ということと「集客の決め手は品揃え」だそうです。市場の動きに敏感でなくては売れるものと売れないものの選別ができませんし、客の「欲しい」にマッチした品揃えが成否を分けるというのもよく分かりました。

 

 そんな大変お忙しい状況の甲斐さんが言われる「4つの力」については以下のように話されました。

 

 一つ目の「相手を尊重し、社会を理解する力」については、「何事にも『自分事』として取り組んでいけるか」ということでした。自分には関係ない、と行動しない人と関係なくても気づいたら行動する人とでは、仲間からの信頼関係が変わって来ると言われます。分かり易く、そして深い言葉だと感じました。

 

 二つ目の「自分を正しく知り、コントロールする力」では、「与えられた役割の中で、ゴールに向かって必死に頑張ること」を挙げられました。自分に自信がなくても必死に頑張ることで周りから「○〇ができる人だ」と評価してもらえると言われます。そしてそれが自分は「○〇が得意」に変わるのだということでした。良い環境が自分を作ってくれるということですね。

 三つ目の「課題を見極め、解決の工夫をする力」については、「目的と手段を明確に理解すること」と仰いました。自分ではっきりと区別するということになります。例えば、部活で100回素振りをするということや、宿題でノート1ページを書くというものがあった時に、それは手段だったはずがいつの間にか目的に変わってしまっていたというものを例として挙げられました。宅習で1ページを書くという学習が面倒になってくると1ぺージ書いた時点で「ヤッター、はい終わり。」と書いたことで達成感を味わっているのは、自分の学力向上が目的ではなくなってしまっていると指摘されました。

 

 4つ目の「働く意義を知り、将来を切り拓く力」については、「何事も楽しんでできる人が成功する人」ということを強調されました。「楽しい」と思える仕事や勉強があるのではなく、仕事や勉強を楽しんでやれるかどうかはその人によるのだと言われます。そのことに関連してさらに、向いている仕事、得意な仕事を見つけ選択することは難しいけれど、今ある環境を「どうしたら楽しめるか?」を見出せる人は、何をやってもうまくやれる人になる気がする、とご自分の体験から話されました。

 

 最後に、「今日から頑張って欲しいこと」に「たくさん失敗をすること」を取り上げられ、しかし「できれば成功も体験すること」と成功体験の重要性も示されました。失敗を悔しいと思い、努力を楽しいと思えるものに出会えたら人生変わるかもしれない、と中学生に期待を抱かせてもらいました。7年生(中学1年生)は13歳です。とはいえ、これまでには数々の成功と失敗があると思われます。そのことと重ね合わせながら聞いてくれたのではないかと思っているところです。

 私は甲斐さんと、先日の高校生のグループワーキングでもご一緒しました。学校種を問わず日向の子どもたちに熱い応援をしてくださる方です。今後とも「日向の大人はみな子供たちの先生」を実践していただける強力なサポーターとしてご協力ください。

 本当にありがとうございました。

2026.10.01

よのなか教室~大王谷学園7年生その1

 先週24日は暑かったのですが、大王谷学園はエアコンによる涼しい教室環境で5校時の暑い外気も影響ありませんでした。ずいぶんと良い教育環境になったものだと時代の流れを感じる始まりでした。

 今回のよのなか教室大王谷学園7年生第2弾は、全部で3名おられますが、(株)はせがわ本舗社長 長谷川実利(ミトシ)様には初めてよのなか先生をしていただきましたので詳しくご紹介します。

 

 「私は長谷川だんごの社長です。」「エーッ!」 このような生徒の大きな歓声から始まりました。長谷川さんは最近足腰を痛められていて、生徒に「座っていいですか」と丁寧に確認されると、生徒は「大丈夫です。僕たちも座っているので。」と優しい「二言返事」(単に一言「はい」で終わらず、その後にもう一言添えること)ができる感じの良い生徒たちです。

 長谷川さんは学生を終えるにあたって宮崎に帰る際に選ばれた職業が警察官でした。暴力団対応の刑事としてご活躍されましたが、実家のお母様が体調を崩されて家業を継がなければ廃業になる状況だったので警察官を退職され、昭和62年に長谷川食品株式会社に入社し社長になられたそうです。「警察官は人を取り締まるけど、商売は人に頭を下げる仕事だから、それに慣れるまで3年かかった。」と言われるほど、警察官の仕事に誇りと情熱かけておられた先の決断だったことに思いを馳せました。ある生徒はワークシートに「人生何が起きるか分からないけど、諦めないことが大事だと分かった。」と長谷川さんの言葉をメモしているのが印象的でした。

琴恵光関の断髪式

 

 途中でファシリテーター(進行として生徒とのつなぎ役)である担任の先生が、「今の職業に繋がっている経験はありますか。」と生徒に役立つ質問でナイスカバーをされました。長谷川さんは「製品を機械で作るようになってからは、それまでに機械いじりが好きだったことが役立っていると思います。」と答えられました。

 また、60歳でサーフィンを始められ、何事も挑戦する気持ちを持ち続けることの大切さは生徒に響いたようです。

サーファー長谷川さん

 

 社是は「お客様の立場になって価値のある製品を作る」であり、企業理念は「食を通して地域社会に貢献する企業となる」とまさに今、こうして地域の生徒へ人生の価値を伝承されていると感じました。

 

 途中で生徒から質問がありました。「団子の値段は昔から変わっていないんですか?」に対して長谷川さんから「変わっています。最近はイラン情勢もあり、昔からすると品物によっては5倍から10倍高くなっています。」と、世情に影響を受ける商売であることを教えてくださいました。

 

 そういう長谷川さんの「4つの力」を紹介します。

 一つ目の「相手を尊重し社会を理解する力」は、「自分から挨拶をする」「相手の話をよく聞く」「時間や約束を守る」ということでした。「挨拶をすることは『私はあなたの敵ではない」ことを表しているのです。」と人類に共通する意思疎通の原点を示されました。

 

 二つ目の「自分を正しく知り、コントロールする力」では、「無理のない目標設定」「よく学び、よく遊べ」「夢は人に伝える」の三点を挙げられました。目標というのは短期的なもの、長期的なものと分けて考えることが大切だとも話されます。その上で担任の先生へのお願いがあり、「帰りの会などで、自分の夢を話すような場面を作って欲しい。人前で自分の目標を話したという事実が本人の意欲につながる。」と、意思決定の重要性を学校側にも求められました。

 

 三つ目の「課題を見極め解決の工夫をする力」は、「原因の追求(失敗は成功の母)」「社員とのコミュニケーション」と提示されました。失敗することを恐れず、そのあとに原因を考えて対策を立てることこそが大切だと生徒の背中を押されました。

 最後に四つ目の「働く意義を知り将来を切り拓く力」では、「生活の糧」「社会貢献」「充実感」の三つをキーワードとして挙げられました。生活の糧は、働くということはすなわち生活基盤を確かにするということであり、社会貢献は、社会に役に立っているという実感が大切だと話されます。そして、目標の達成や困難を克服するという充実感が、働く上で将来を見通す力として重要だと生徒たちに伝えられました。何と言っても稼がないことには生活成り立たないし、ある程度生活ができたとしても、充実感がなければ長続きはしません。いわゆる「社会の壁」にぶつかって早期離職する若者が多いのも、この将来を見通せないところに不安や充実感のなさを感じることが原因にあると状況分析を読んだことがあります。しっかりと10年以上一つの仕事を続けていき、その仕事では一流となるまでの努力をしていくことは大切な汎用力育成につながると思います。

 

 学習の最後に長谷川さんから「今日から頑張って欲しいこと」として、「読書」と「家の手伝い」を挙げられました。本に触れる習慣を身に付けて欲しいと言われます。ネット社会になり何でもすぐに答えが見つかり、それを正解と思って行動に繋げていく。それだけに、誤答だったと気付いた時には味わったことのない挫折に陥ることになる人も多い現代です。本というのは自ら手に取り、1ページずつめくっていく中で登場人物の背景を想像し、行動について考える積極的思考が必要になります。スマホに慣れ切った世代には実に面倒な作業になります。しかし、そのような手順を一冊の本に向かい精力を傾けていく過程で想像力や場面対応力などの生きる力を知恵として獲得していくことができます。子どもに「マコチ考えんもんじゃ!」と怒るより「本を読みなさい。」と言い、家庭で読書環境を広げていく方が豊かな人生を送らせる遠くて近い指導になると思います。

 

 長谷川さんの言われる家の手伝いでは、風呂やトイレの掃除という家族の一員であれば当たり前の習慣を身に付けさせることは本当に大切です。学校では清掃の時間がありますが、私は現役教員時代によく感じていたことがあります。「この清掃は家庭で生きているのか」と。流石に現在は、絞った雑巾を二つ折りにして四つん這いになり腰を突き上げて、タッタッタッタッと一直線に拭くような床拭きをさせている学校はほとんどないでしょう。膝を折って手の届く範囲でコの字型に拭かせていると思います。ところが、この拭き方でさえ家庭ではやっていないと思います。ほとんどの家庭では、乾燥モップで拭くか掃除機ではないでしょうか。或いはもはや、ロボット掃除機での自動運転かもしれません。そうなると学校でやっている清掃は無駄な時間なのでしょうか。そういう自問自答を私はよくしたものです。答えは「ノー」です。生活において直接的に役立たなくても体に染み込ませる経験が大切なのです。以前、教え子が卒業し5年後くらいにその親と会った時、その方が私にこう話されました。「家で年末の大掃除をしようとして、高校生の息子に『雑巾を濡らして窓を拭いて。』と頼んだら、息子が『なん言いよっとねお母さん。新聞紙があればいいっちゃが。一方を濡らして窓を拭いて、もう一方の乾いた方で拭き上げるとよ。これ小学生の時に山之内先生から習ったよ。』と自慢げに言うのですよ。」と、笑顔で子どもの成長を喜びながら話されました。経験した地道な作業が生きる力となって生活の中に沁み込んでいくことの大切さを実感をもって教えられた気がしました。それと同じことで、小学生の交通安全教室で「右側通行」を徹底して指導することや、集団で歩行するときに間隔をとって歩くことなどを日本の学校で指導していることが、大災害時に「整然と動く日本人」と称賛される所以ではないかと私は考えています。

 

 長くなりましたが、長谷川さんの仰る「家の手伝い」は皆さんのご家庭でどんどんさせていただきたいです。最近の子どもはとても忙しいです。少年団や習い事、部活や各種試験などで休む暇もないくらいです。しかし、それだからと言って家事について親がすべてを行い、子どもの時間を作ってあげようと余計な配慮をしてしまうと、「家族の一員」を理解しない大人になってしまい、ひいては「生活力のない大人」に育ててしまうのではないかと危惧します。私は4歳の孫と風呂に入る時に、風呂の洗い方の手順を教えています。勿論モップを上手に使うことはできませんし、させると掃除というより遊びに近いのですが孫はフムフムと手順を覚え、また、仕事を与えられる喜びも感じているようです。長谷川さんの仰る「読書」と「手伝い」は、家庭教育のキーワードになること間違いなしです。ぜひ、お友達を巻き込んで「共同実施」されてみてはいかがでしょうか。 

 これを読んでおられるご家庭に子どもさんがおられましたら、ぜひ家事を話題にしてください。いや、読んでおられるご家庭はすでに、そういう方針を取られていると心配無用かもしれません。また、市内小中学生がいましたら、このような社会人講話「よのなか教室」で「どんな話があった?」と聞いていただきたいと思います。このブログでの記事を読んだことは伏せておいて、「フーン、なるほどね。」と傾聴に注力すると、共通の話題として盛り上がること間違いなしです。

 

 中学生になれば18歳で巣立っていくまであと僅かです。子どもさんが自分の子どもとして近くにいるのも残り数年となります。出て行って寂しくなる前に、自立した家庭生活を送れるよう様々な機会を捉えて会話をし、家族の一員として積み上げていくこと、すなわち「キャリア発達」を促していくことが大人の務めではないかと思います。

 

 長谷川さん、足腰のお悪い状況の中、学校の階段を上り下りさせてしまいましたが、生徒の心に沁みるお話をありがとうございました。

2026.09.25

よのなか挑戦~平岩小中学校

 先週17日は、平岩小中学校8年生のよのなか挑戦最終日です。センターのスタッフと数か所を巡回に出掛けました。というのも、その1週間前に、「14歳のよのなか挑戦事前学習」で私が8年生に授業を実施したので、その実施現場も見学しておく意味があり出向きました。すべての事業所を回ることはできなかったのですが、5か所を訪問することができました。

 

 どの事業所でも「生徒さんは頑張っていますよ。」「きちんと言われたことをやり遂げてくれましたよ。」などとお褒めの言葉をいただきました。また、「レジの打ち方がとても上手になりました。」とか、「手際が良く詰め込むのが早くなりました。」と技術面での3日間の成果が早くも表れた生徒もいたようです。

 

 ベッドメイキングをする生徒、新入荷商品を検品後陳列する生徒、食事処の箸を補充する生徒、レジを打つ生徒、パンを袋に詰める生徒、お菓子を袋詰め・箱詰めにする生徒など、実際の現場で働く生徒から、私が学校で見かけた表情とは異なる真剣な眼差しを見ることができました。

 

 活動中に生徒に質問してみると「なかなか大変です。」とか、「客としては来たことがあったけど、実際の働く側で入ってみると、こんなに大変だったのかと分かりました。」と、体験学習の一番目の目標である「生産者側(事業所側)の視点で見られるようになること」を体現したことになって良かったと私も嬉しくなりました。この経験が「社会の一員としての自覚」に繋がり、これから自分が社会の中で生きていくための指針の一つになったことだと思います。

 

 これまでよのなか教室において講師になっていただいた方の中には、「中学生の頃のよのなか挑戦がきっかけだった」という方がおられます。日向市のキャリア教育で大事にしたいのは「どこでも通用する力」(自分軸)を身に付けてもらうことです。先輩よのなか先生のように、どこでも通用する力を付けながら日向を選ぶことも一つの道ですし、そのほかの大勢の日向出身者もきっと現在の地で、これまでの経験を発揮し頑張っていただいていることと思います。

 

 見学してみて、私の中学時代にもこのような体験学習があったら、自分の生き方の軸を考えるきっかけがさらに深まったかもしれないと思うこの頃です。

 

 お店のスタッフの方に、中学生の様子をお聞きしたところ、「覚えが早くて本当によくやってくれています。」と褒めてくださいました。

 

 お菓子を袋詰めにしている生徒に対しては、「手際がよくて速いです。とても器用で上手にできます。」と3日間の最終日とあって、仕事にも慣れてきたことが伺えました。全国的に言う、まさに「慣れの3日目」に当たります。県外では5日間を職場体験学習として設定し、それほどに学校も地域もこの社会体験を行う学習を重視していることがわかります。日向市では主に3日間ですが、「4つの力」の獲得とそれぞれのミッションの解決へ向けて、事業所の皆様のお力をお借りしながら、生徒を大事に地域で育てていただいているところです。

 

 事業所の皆様は、生徒に何かあれば大きなリスクを背負うことになることも理解していただいた上でのお引き受けに心より感謝いたします。本年は、事業所に保護者が子どもの働きぶりを見に来られたという話をあちこちで聞きました。事業所を挙げて地域で子どもを育てるという想いをご家庭でも理解していただいることが伝わってきました。

 平岩小中学校の8年生も3日間の体験学習を通して大きな収穫があったことだと思います。ぜひ発表会へ向けて意味ある資料作りに励んでいただきたいと思います。

2026.09.24

14歳のよのなか挑戦~日向中学校

 「14歳のよのなか挑戦」は市内各中学校で実施されています。すでに終了した学校もありますが、残すところ美々津中学校と大王谷学園中等部そして東郷学園若竹分校になります。先日、平岩小中学校8年生にてよのなか挑戦事前学習を実施した帰りに「ミツイシ(株)」に立ち寄ってみました。

(画像は記事とは関係なく体験活動の様子を掲載しております。)

 

 

 日向中学校2年生のよのなか挑戦が最終日として実施されていました。すでに時間が遅くなっていたので生徒は振り返りの場面になっていました。担当されたスタッフの方に活動の様子を伺うと、「熱心に取り組んでくれました。」と褒めていただきました。振り返りノートに記録中の2名の生徒にも聞いてみました。すると「学びがありました!」と即答してくれたので大変嬉しくなりました。コツコツと鉛筆を走らせていたので、どんな学びかは聞き出せていませんが、こういう反応ができることは体験が学習にきちんと繋がっていることを証明しています。この生徒たちはきっと、帰校後のまとめも自分の確かな成長の軌跡として残してくれるでしょう。こういう学びが先週お伝えした「ひなた場」での高校生のように「体験の言語化」として自分にキャリアを蓄積させ、自信となって他人に語れるようになるのだと思います。

 

 私には日向中生に「14歳のよのなか挑戦」の事前学習を行った責任もありますので、最後の発表会まで見届けたいと思います。

 

 

 協力していただきました事業所の皆様、多忙なお仕事の中に中学生へのご指導が入り通常業務に支障が出たかもしれませんが、快くお引き受けいただき本当にありがとうございました。3日間の活動プログラムの計画や実際の作業手順の手ほどきなど、お骨折りいただいたことだと察します。また、その生徒の配置計画や直前指導、期間中の巡回など、企画運営は学校・学年でご苦労されたと思います。事業所で事故なく3日間を過ごせたのは、事業所の方々の気配り、目配りなど安全に配慮していただいた結果ですし、学校では担当学年の先生方が単に学校行事ではない「生き方学習」として重要な位置付けであることを認識されているからこその成果だと思っております。終わってからの意義づけこそが大切で、ミッションをどう言語化していくのかという作業が必要になります。発表会まで指導は続きますが、学校におかれましては引き続きよろしくお願いいたします。

 

 *画像は、学校からご提供いただいた紙面からの引用になります。

2026.09.17

ひなた場~飯野高校+加久藤中学校

 

 先週、えびの市飯野地区コミュニティセンターにて「ひなた場」が実施されました。以前このブログで延岡旭中学校や高鍋西小学校での「ひなた場」についてご紹介しましたので、ご存知の方も多いかと思います。全国的には「かたり場」と言われている、中学生や小学生が初対面の大人や高校生などと対話をする「人生学習」になります。リードするのは年長者ですから、いかに年長者が年少者に自分を語れるか、或いはじっくりと否定せず受け入れられるか、そのことに成功の鍵があります。

 

 今回、飯野高校普通科探究コースの3年生14名と加久藤中学校3年生26名が参加し、グループに分かれて会話の場が設定されました。編成の方法や詳細については、以前のブログで紹介したので省略しますが、高校生に対して中学生が1対1で自分史(人生グラフ)を提示しながら語り合うというものになります。残りの中学生は別の場所に陣取った6名の高校生による人生紙芝居(こちらも自分史を絵や画像で説明する)を聞きに行きます。

 

 そのようにして、進行が時間を区切りながらローテーションをしていくことになります。たくさんの県内の参観者が周りで聞いていても高校生は紙芝居で堂々と自分史を語って中学生から笑いと頷きを得ていましたし、1対1の人生グラフでは、ボソボソと話す中学生の言葉に高校生が一つ一つ「うん、うん。」「分かる、分かる。」「そうだよねえ。」と傾聴していました。

 

 ある人生紙芝居のコーナーの男子高校生です。中学女子2名を相手に「高校のオープンスクールは何のためにする?」と質問します。すると中学生が「どんな高校か知るため。」と答えます。高校生「そうだよね。で、その時、質問した?」中学生「いいえ。」高校生「自分が進学した学校が考えていたイメージと違ったらいやじゃない?徹底的に調べることは大切だよ。ぼくは、大学進学を考えていて、候補の大学のオープンキャンパスを調べて夏休みに出かけたんだ。その際、事前に調べていた学部の教授に直接聞きたくて、当日探し出して捕まえて、『ここではどんなことが学べますか。』『学内の雰囲気はどうですか』など質問をしたよ。」この男子高校生に中学女性と2名は圧倒されながらも自分の道を切り拓く力にかなり納得していた様子でした。

 

 今回は「ひなた場」終了後に、我々参観者が自由に高校生に質問して良いという場が設けてあったので、早速高校生の所へ行き、「なぜ皆そんなに自信をもって中学生に語れるのですか。」と聞いてみたところ、「探究コースの学習ではいつもディベートや討論をやっていて、それに『ひなた場』も2回目だし、そういう経験から自信が付いてきました。」「初めは僕も話すのが苦手でしたが、だんだんと慣れてきて自信がついてきました。」と学習効果について嬉しい成果を話してくれました。まさに自分の想いを言葉にする言語化能力を獲得した形になります。

 

また、これは私の感想ですが、途中の「1対1会話」を見ていても、高校生が中学生に対して自分を赤裸々に語れるまでに成長できているのは学校が仕組んだ教育課程が志望し入学してくる生徒のニーズにマッチしていたことになります。一人の高校生は、「私は中学3年生の時に進路について悩んでいて、そのとき『全国留学生プログラム』があることを知って色々調べているとき飯野高校を見つけて、この高校について調べてここに決めました。来てみると、探究学習のプログラムが色々組んであってとても面白くて来てよかったって思ってます。」と笑顔で話し中学生も深く頷いていました。ほかにも東京からの留学生もいて、飯野高校は山間部にありながら外からの刺激に満ちていることを感じました。そのことが地元の高校生に大きな影響を与え、会話にも効果が生まれているのだと実感したところです。

 

 「ひなた場」は大人と学生が語り合う場として構成する場合が多いのですが、こうして学生同士で語り合うのは、年齢が近いからこそ共感度が高いことが今回のセミナーを通しての私の発見でした。親や教師という「縦の関係」では直接過ぎて生徒は自分を語りづらい。かといって友達や同級生の「横の関係」でも慣れあい過ぎて、これまた話しづらい。ではということで「斜めの関係」である「地元の大人」や「学校種の異なる生徒」であれば語りやすくなるという効果のもとに設定されています。「人生グラフ」という自分史を作るためには、自分がしてきたことと向き合わなければなりません。それはある種苦痛を伴うことになるかもしれません。しかし、その真摯な自分との向き合いがあって初めて自分の殻を破れるのでしょう。そして「ひなた場」ではそれを初対面の相手に語るのです。そうやってアウトプットすることで一気に自分が解放されます。それで何ができるか。「自信」です。さきほどの飯野高校生のように、自分に自信が持てるようになるのです。「それまでの人生は苦しいことも色々あったけど、それを乗り越えて今こうやって前を向いています。」と、メッセージを発信することができるまでに成長している自分を確認することができます。

 

 それはそのまま、現在、「よのなか教室」での「よのなか先生」の振り返りにも直結すると思います。私がそうです。色々な学校で「よのなか教室事前学習」を実施する場合、人生グラフと共に私の自分史を語ります。そのプレゼンを作成する時、そして実際に生徒の前で自分史を語る時、自分がしてきたことと向き合うことになります。そうやってこれまでの人生を振り返り人に話すという機会は、改めて設定されない限りなかなか無いものです。よのなか先生もそれを実感していただいているのなら何よりのお礼になると思っております。

 飯野高校生と加久藤中学校生の対話による人生学習「ひなた場」は、一人一人の人生の1ページに深く浸透するキャリア教育の一つの形になると確信します。日向市でも導入できるようにしたいと思いますので、キャリア教育の発展的な取扱いとして言語化能力や傾聴力を高めたいと思っている学校がありましたらご連絡ください。こちらからもアプローチしたいと思います。

 

 

2026.09.16

14歳のよのなか挑戦事前学習~平岩小中学校8年生

 先週、平岩小中学校にて「14歳のよのなか挑戦」(社会体験学習)いわゆる「職場体験学習」の事前学習に出向きました。8年生の学級になります。

 

 「よのなか教室」は日向で働く大人である社会人を講師として、<これまでの人生模様>に始まり、<仕事の内容>を話していただいた後に、講師が考える社会人として必要な「4つの力」について児童生徒に分かりやすく伝えていただく学習になります。それにとどまらず、まとめとしての「今日から頑張って欲しいこと」を子どもたちに伝え、一人一人が噛み砕いて自分に取り入れてもらうようにしています。最後に「日向の魅力」と題して、日向の自然や産業、文化など、大人であるからこそ気付く故郷の魅力を若い世代の視点に潜り込ませようと構成しています。いつかその言葉の一つでも記憶に残り振り返る手助けになれば幸いです。

 一方、「よのなか挑戦」は保護者の皆さんも経験されていると思いますが、市内各事業所へ出向き、各事業所のプログラムで3日間の職場体験を行うものになります。従業員と同じことを体験させてもらうのではなく、「働くことの厳しさと誰かの役に立つことの尊さ」を体感してもらうようにお願いしてあります。例えば<挨拶と身だしなみ>について、日常的に家庭や学校で厳しく指導してもなかなか改善されない場合があります。社会で働く上では、挨拶や身だしなみでスタートラインに立てることを現場の肌で感じることは貴重な経験になることでしょう。また、慣れない仕事をしていると失敗することもあります。その際、どうしてうまくいかなかったのか、どうすればうまくできるか。そういう機会を与えてもらうことで「状況を考える人」として現代社会で機能していく人材に成長できます。

 

 現代の若者は就職3年以内に退職するいわゆる「早期離職」が増えています。宮崎県の平均は全国平均を4ポイントも上回っています。何が原因かを分析したデータがありました。その一つに、失敗した時や悩み、ストレスを抱えた時に「誰かと相談できなかった」ことが挙げられていました。すなわち、失敗することは誰でもあるのですが、それを「乗り越える力」ができていなかったのです。最近の横文字で言えばレジリエンスが足りなかったことになります。これは社会に出てから身に付けようとするのでは遅すぎます。小中高校に在学している間に、様々な経験から養っておく基本的な生きる力になります。挫折の経験や友人、教師、指導者、家族などからのサポートで立ち直る経験などを経て身に付くものです。その上で社会人になり失敗した時は、周囲のサポートを得て立ち直るという回復過程が自立していく上で重要な基盤となります。

 一方でその分析データの中に、「相談できる相手がいなかった」ということも挙げられています。職場の中では「先輩」がいます。その立場にある人が悩んでいる「後輩」に気付き手を差し伸べるような職場の関係構築も必要になります。

 しかし、我々が行っている事業は職場関係には踏み込めませんので、できることは、子どもたちに体験を通して「誰かの役に立つことが労働であること」そしてそれが「働くことの意義」になること。さらに、失敗したことを相談によって乗り越えるために日常的な関係構築を図ること。そのようなことを学生のうちに「突破力」として意識できるようになってもらうことです。そういう「生きる力」について多くの講師から「聴く」という体験で「生き方の軸」を形づくってもらえることを願っています。生きる過程の一部に「よのなか挑戦」が位置づけられているという長期教育計画を見通しながら人間づくりの一助となるよう努力したいと思っています。

 

平岩小中学校でもこれまでのよのなか挑戦事前学習と同様に、事業所側の視点を考えさせ、「4つの力」が人間づくりに大切であること、それを具現化しやすいようにムービー視聴も行いました。

 

授業後に生徒が答えてくれたアンケートを見ると、「仕事をする厳しさ」を考えてくれたようですし、「働く上でのマナーの大切さ」や「4つの力は『自分軸』を作るうえで大切であること」を学んでくれたことが伺えます。また、この8年生は将来に対する意識が高く、7割の生徒が目標をもって生活していることが分かりました。この事前学習で将来の目標を決められた生徒もいますし、よのなか挑戦を経てしっかりと決めたいと考えた生徒もいるようです。

アンケートの最後の質問に「地元日向の将来をどう考えるか」という項目では、5割を超える生徒が何らかの形で「日向を盛り上げたい」と考えていることが分かりました。中学生の頃から地元で就職するとは考えにくいでしょうし、「よのなか先生」たちも口々に「一度は外に出て」というように、外から日向を見ることは大いに意味あることだと思います。希望に満ちた学生の時代は大志をもって欲しいと思いますし、実際、中学生の多くはそう思っていることでしょう。それでも現時点で5割を超す生徒が日向のことを意識してくれていることが喜びでもあり街の誇りにもなります。キャリア教育の本質は生徒に希望を手渡すことです。「どんな状況にあっても人と繋がりながら試行して生きていく」 そういう大人になってくれることを願いながら、私も精進したいと思います。

昨日から始まっている平岩小中学校8年生の「14歳のよのなか挑戦」です。子どもたちの置かれている現状や世の中の動静など我々を取り巻く社会の構造を考えてみると、改めてこのネーミングの意義と重さを嚙みしめなければならない思いです。厳しい社会情勢にあっても協力してくださる事業所の皆様のご支援に心より感謝いたします。

保護者の皆さんは時間をつくって子どもさんの働く様子を見学に行かれてはどうですか?「○〇の親です。お世話になっています。」で中へ通してもらえると思います。

2026.09.15

合同研修会

 先々週、当センターにて、延岡市キャリア教育支援センターの方々との合同研修会を開催しました。お互いの実績や課題を共有し、よりよいキャリア教育の展開につなげるのが狙いです。当日は、県のキャリア教育担当(小田史郎さん)も参加され、狭い事務所が賑わいました。

 

 初めに日向市の取組を紹介しました。これはここで書くまでもないので省略します。課題としては、現在力を入れている「よのなか教室」が市内すべての小中学校へ普及できていないということです。キャリア教育の目標である基礎的・汎用的能力の育成という部分は、まさに「生き方」の教育であり、現在における「自分軸」をどう作っていくのかという柱の立て方を考えるという学習になります。小学生や中学生に自分の軸を考えさせて何になる!そんことまだ分からんだろうが!という考えもあります。大人ですら軸が定まっていないと感じることもあるかもしれませんが、その年齢に応じて過去の自分と向き合った上で今後は「こうありたい。」と意思決定しながら前を向く事は、生きる意味を見いだす上では意義のある学習過程ではないかと思います。法隆寺などの建築物には塔の中に宙吊りという一見無用な柱が吊り下げられているそうです。実はこれが地震の際に重要な役割を果たし、塔の倒壊を防ぐ働きをするそうです。無駄のように思えるものでも、実は自分の中では芯になり大地に根を下ろし、我が身を前進させているエネルギーになることを期待したいと思います。

 

 さて、合同研修会では、次に延岡市の取組についてご説明をいただきました。

 延岡市では、日向市キャリア教育支援センターの初代センター長である水永正憲さんをはじめ、酒井康行さんや敷石輝幸さんの3名で精力的に市内の学校を回り、よのなか教室として授業や講演会を計画されています。その数が半端ない数で、年間700名を超える講師を学校に派遣されています。1回の学校開催で5名以上の講師を招聘し、毎週実施となると、そのような数になるということです。日向市の場合は、キャリア教育の目標に沿うような形での講話をお願いするために資料づくりを講師に依頼するのではなく、センターのスタッフが作り上げているため、数多くの講話を実施することはできないという特性をもっています。それぞれの地域での取組の良さが形に現れているようです。

 

 また、延岡市の特長としては、「ひなた場」を実施していることです。以前、旭中学校や高鍋西小学校の事例をブログにて紹介しましたとおり、大人と学生が1対1で自分史を語り合う学習になります。自分の歴史や今考えていることを即座に言語化する力が求められるので、そういう場の設定があるからこそ生徒は徐々にそういう言語化能力が身についてきます。ぜひ日向市でも導入したいと思っています。

 

 日向市のキャリア教育支援センターは教育委員会からの委託で成立しています。ですから予算的には過不足なくなんとか実施できております。欲を言えば、講師の皆さんに謝礼などができればよいのですが、そのような余裕はまったくありませんので、児童生徒の成長とそれぞれの事業所の紹介、認知をお礼に代えるしかありません。各事業所のよのなか先生は、子どもたちの成長のためならばと、無償で時間を割いて参加していただいております。これは延岡も同じことです。しかし、何事も事業には予算が確保できないと動き出せないので、延岡市の場合は今後の活動の持続のために方策を考えていかれるようです。

 

合同研修を通して多くのことを考えました。先日の就職前提の模擬面接を想定したグループワークにおいても指摘されましたが、実社会では「状況を考えられる人材が欲しい」とも言われます。それは学生の頃からしっかりと思考する態度を獲得していなければ、社会人になる時に身に付けられるものではありません。「なぜそう考えるのか」「それはどういう形になるのか」など、その場で瞬時に考え言語化できなければ相手には伝わりません。

「集中力」や「持続力」は体験で身に付けることができます。一方、「判断力」と「決断力」は体験でも身に付けるられるものの、多くの先人の知恵や知見から学び、それを訓練することで自分の身に沁み込ませることができるようになると思います。

人生はまさに「選択の連続」と言ってもよいのかもしれません。あの学校を選んでいれば、逆に選んでいなければ。また、あの時その判断をしなければ、あの時やりたかったことをやっていればなどと、その時々の判断を思い返すことは誰にでもあることだと思います。そしてその時「こうしよう」と決断してきたのです。

どういう判断や最後の決断になろうとも、それを振り返り反省していくためには、その時点で言語化していなければ反省の仕様がありません。「こういう経緯でこうした。」「こうなることを想定してそのようにした。」というように思考を言語化することは重要なことです。「ちゃんと言わなきゃわからないでしょ!」これもよく聞く幼児への言葉ですが、その場で終わらせるのか、そういうことを訓練するための学習機会(特に読書)を家庭に位置付けたり、学校教育では教育課程に設定したりできるか。子どもが受けるべき時に受けられる教育の観点を、「日向の大人」は、水が掌からこぼれ落ちないように差し伸べられるかを問われている気がします。

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