Hyuga City Career Education Support Center
2026.10.14
先週、北海道室蘭市のキャリア教育シンポジウムに参加しました。北海道の10月はさぞ寒いだろうと覚悟をして向かったのですが、気温は日向とそれほど変わらない3日間でした。長い報告ですがお付き合いください。

シンポジウム当日の午後、開会セレモニーは商工会議所会頭の挨拶に始まり、すぐに講演になりました。基調講演のテーマは、「学校と地域・企業をつなぐキャリア教育の仕組みづくり~産学官親の連携が創る新しいキャリア教育~」であり、1人目が私です。
私は、「『自分軸』をもった生き方を育む日向市キャリア教育の取組~「4つの力」の獲得を目指して~」という演題でお話をしました。実は、室蘭市は本年度からのキャリア教育センターの立ち上げに当たって、昨年度日向市に視察に来られていました。その縁があり、今回講師に呼んでいただいたという経緯があります。私の話は、日向市民にとっては日常的にこのブログでお知らせしているような内容です。「よのなか教室」や「14歳のよのなか挑戦」をキャリア教育の中核として位置づけ、それに事業所がどのように関わっていくのかという一連の仕組みについては、今から始まる自治体には参考になるのではないかと自負します。日向市のこれまでの13年間の経緯と現在の取組について、コンパクトにまとめてお話させていただきました。

2人目は、一般社団法人キャリ・ラボ291(フクイ)代表理事 山村直主(なおゆき)氏の講演です。
演題は「地域で人を育て、地域の未来をつくる~学校・企業・地域をつなぐキャリア教育の仕組みづくり~」です。これからキャリア教育に取り組み始める自治体では、日向市のように行政からのサポートが受けられない場合もあることを理解した上で法人化したセンターを立ち上げようとする方向性もあります。福井市でも山村さんが率いる会社がキャリア教育を牽引しておられます。
福井市では、企業におけるキャリア教育として、KIYOKAWA工業(株)での人材育成の先行事例を紹介されました。大人も学ぶ企業の探究型教育を推進しているそうです。時代は企業の社会的責任CSRの時代から共通価値の創造CSVの時代へ変化していることは勉強になりました。以前から企業は社会に積極的に貢献するということが求められていましたが、現在は、CSVとして企業も社会(市民、子ども)も同時に価値を高めていくという取組が重要になるということです。つまり、CSVで「向き合うべき課題を自分事化する」ことが一人一人に求められるという訳です。
この事例としてKIYOKAWA工業(株)の一人一人の社員に「個人パーパス」を作成させる取組を紹介されました。入社時の目標から5年後、10年後にそれぞれの自分の位置から将来を描く(言わば、「キャリアパス」:注;山之内)を更新させていくという取組です。具体的には、新入社員が、当初は社内でのキャリア発達を目指したパーパス(目標)が、日向市で言うところのよのなか先生などの経験を経て、年数と共に変化し、社会貢献を意識するようになって、現在は市内小学校のPTA会長として尽力する位置に高まったということでした。この関係から本人の「個人パーパス」が更新されていく過程を紹介されました。企業の社員に深くキャリア教育を浸透させている福井市の取組を興味深く聞かせていだたきました。
山村さんは「キャリア教育の地域の5つの意義」を以下のように提示されます。①次世代の人材を育てる ②関係人口をつくる ③経営課題を見直す機会になる ④社員自身の成長 ⑤地域の未来をつくる。
これらは日向市のキャリア教育推進における意義と一致するものが多くあります。私は特に、4つ目の「社員自身の成長」について山村さんがこれは「キャリアの棚卸し」になると言われたことが印象的でした。社会人講師として学校で子どもたちに関わることで自分自身のキャリアを見つめ直し、自分こそ成長できているのかを確認することに繋がるのでこういう表現をされたのだと思います。ご本人に「日向でも使わせてもらいます。」と承諾を得ましたので活用させていただきます。
長くなるので福井市の取組について後は簡単に紹介します。
「キャリアドリフト型」を2020年から取り入れていること(キャリアを決めつけず、柔軟に対応していくこと)、ポータブルスキル(基礎的・汎用的能力、社会人基礎力;これは日向市と同じ)など、流石に時代の先取りをされています。また、福井市キャリア教育プログラム事業の仕組みとしては、現在福井市の「認定キャリア教育コーディネーター」(経産省)取得者14名全員が市内企業の社長である点は驚きでした。山村さんと別席でお話した際に、学校へアプローチするには「教育に精通していることを示す肩書が必要だから」だそうで、そこから積み上げていく姿勢に熱量の大きさを感じました。さらに、これはとても大事な視点なのですが、学校の教育目標を実現するためにキャリア教育の力を活用するという姿勢を明確にすることで、あくまでも福井のキャリア教育は学校教育の一環として位置づけていることを学校に印象付けることでは成功していると言えます。「福井にある資源を一つずつ教育に」のキャッチフレーズのもとに広くそして確かにキャリア教育を展開されていることがとても刺激になった講演でした。

続いてパネルディスカッションに移りました。
全体進行としてのモデレーターに室蘭工業大学特任教授/キャリア・サポート・センター長である相津佳永氏、そして室蘭工業高校長の菊池裕幸氏、白蘭学園校長の松岡賢晃氏、桜ヶ丘幼稚園理事長の杉山英子氏、PTA連合会長の春木一喜氏、登別室蘭青年会議所理事長の吉田鉄矢氏、室蘭商工会議所委員長の今野香澄氏の計7名が登壇されました。
4つのテーマでの議論となりました。以下1つずつテーマに沿って簡単にお知らせします。
①今の子どもたちは、室蘭とつながっているのか。
・幼児期には世の中に色々な人がいて色々な仕事があることを知ることが子どもたちの可能性を広げていくことになる。・自分も地域の一員として関わりたいというところまで小中9年間の学びをつないでいくことが学校の役割になる。・高校ではM-Conと言われるコンソーシアムの仕組みを構築し、結果として地元企業に就職する割合が増えた。・保護者が地域の企業や仕事を知る機会を増やすことが大切である。・企業がもっと前面に出て、地域の魅力を伝える必要がある。・室蘭は「鉄の町」として知られているが、実際には地域の企業がどんな仕事でどんな技術をもっているのかというところまで知られていない。
②地域ぐるみで育てるとは、誰が何をすることか。
・室蘭の「子ども未来指針」として学校だけではなく地域の力を学校の中に取り入れていくことが重要だ。・高校でも実社会との結び付きをよりリアルな「自分事」として実感できるようになることが大切である。・企業が日常の中で子どもたちとつながる場面を増やす必要がある。・幼児期にこそ実体験を積み重ねることで知的好奇心が満たされるので、本物にたくさん出会わせていく経験が必要だ。
③室蘭キャリア教育センターは何をするべきか。
・学校と社会をしっかりつないでほしい。・人と人、学校と企業、学校と地域をつなぎながら、室蘭全体で子どもたちを育てる仕組みをつくっていただきたい。・地域や企業との横のつながりと校種を超えた縦のつながりがセンターの役割だと期待する。・企業が協力したい時に気軽に相談できる役割を担ってほしい。・室蘭の企業や仕事についての情報発信を継続的にすることが重要である。
④明日から何を始めるか。
・幼稚園では小学校との連携を密にするようにする。・義務教育課程において、自分は地域の役に立てるという自己有用感を育てたい。・高校では今後のコミュニティ・スクールへの移行に合わせて、地域とともに歩む持続可能な学校づくりを進めたい。・PTA連合会として、地域の仕事やキャリア教育の情報を保護者につないでいく。・青年会議所として、企業見学や働く大人の話を届ける機会を継続し、子どもたちが大人のリアルに触れる機会を充実させる。・SNSなどを活用し仕事を知ってもらう情報発信は有効である。

議論のまとめとしては、「子供は地域の未来そのもの」「誰かに、どこかに(キャリア教育を)任せない」「共に地域が連携する」このことを全体確認し、同時にシンポジウムも閉会しました。
今回、遠い室蘭まで呼んでいただき他地域のキャリア教育推進について学んだことで私のキャリアは確実に向上したと思いますが、室蘭にも何らかの視点を差し上げることができたのなら幸いです。また、シンポジウムで得た私の課題は、日向市の子どもたちにいかにキャリア形成を促すか、そしてそれはどのような形で子どもたちの成長に蓄積されたのかをしっかりと把握することが大切だと改めて実感しました。その上で、子どもたちが確実に日向市を支える存在に成長できることを把握していくことが責務であると痛感します。それは子どもたちが市内に留まることのみを目指すのではなく、外からも確実に日向市を支える大人に成長してもらえるように、さらにキャリア教育の重要性と確かな教育への浸透を図っていきたいと思います。

冒頭で日向市と変わらない気温だと書きましたが、室蘭市内の至る所でナナカマドの紅葉が始まっており、3日間がたまたま高い気温だったのだと思われます。帰路夕方、日向市駅(日向坂46駅:期間限定)に降り立つとまだ暑い中、翌日からの十五夜祭りへ向けた舞踊隊の練習が佳境を迎えていました。南北に長い日本列島はやはり大きな気候の違いがあることを感じつつ、キャリア教育の熱量はどの地域でも熱く上昇していると肌で感じた出張となりました。室蘭市の皆様、大変お世話になりました。共にキャリア教育の推進を頑張りましょう。(室蘭市の方々もこのブログを読んでくださっています。)
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