Hyuga City Career Education Support Center
2026.10.01
先週24日は暑かったのですが、大王谷学園はエアコンによる涼しい教室環境で5校時の暑い外気も影響ありませんでした。ずいぶんと良い教育環境になったものだと時代の流れを感じる始まりでした。
今回のよのなか教室大王谷学園7年生第2弾は、全部で3名おられますが、(株)はせがわ本舗社長 長谷川実利(ミトシ)様には初めてよのなか先生をしていただきましたので詳しくご紹介します。

「私は長谷川だんごの社長です。」「エーッ!」 このような生徒の大きな歓声から始まりました。長谷川さんは最近足腰を痛められていて、生徒に「座っていいですか」と丁寧に確認されると、生徒は「大丈夫です。僕たちも座っているので。」と優しい「二言返事」(単に一言「はい」で終わらず、その後にもう一言添えること)ができる感じの良い生徒たちです。

長谷川さんは学生を終えるにあたって宮崎に帰る際に選ばれた職業が警察官でした。暴力団対応の刑事としてご活躍されましたが、実家のお母様が体調を崩されて家業を継がなければ廃業になる状況だったので警察官を退職され、昭和62年に長谷川食品株式会社に入社し社長になられたそうです。「警察官は人を取り締まるけど、商売は人に頭を下げる仕事だから、それに慣れるまで3年かかった。」と言われるほど、警察官の仕事に誇りと情熱かけておられた先の決断だったことに思いを馳せました。ある生徒はワークシートに「人生何が起きるか分からないけど、諦めないことが大事だと分かった。」と長谷川さんの言葉をメモしているのが印象的でした。

琴恵光関の断髪式
途中でファシリテーター(進行として生徒とのつなぎ役)である担任の先生が、「今の職業に繋がっている経験はありますか。」と生徒に役立つ質問でナイスカバーをされました。長谷川さんは「製品を機械で作るようになってからは、それまでに機械いじりが好きだったことが役立っていると思います。」と答えられました。
また、60歳でサーフィンを始められ、何事も挑戦する気持ちを持ち続けることの大切さは生徒に響いたようです。

サーファー長谷川さん
社是は「お客様の立場になって価値のある製品を作る」であり、企業理念は「食を通して地域社会に貢献する企業となる」とまさに今、こうして地域の生徒へ人生の価値を伝承されていると感じました。

途中で生徒から質問がありました。「団子の値段は昔から変わっていないんですか?」に対して長谷川さんから「変わっています。最近はイラン情勢もあり、昔からすると品物によっては5倍から10倍高くなっています。」と、世情に影響を受ける商売であることを教えてくださいました。
そういう長谷川さんの「4つの力」を紹介します。
一つ目の「相手を尊重し社会を理解する力」は、「自分から挨拶をする」「相手の話をよく聞く」「時間や約束を守る」ということでした。「挨拶をすることは『私はあなたの敵ではない」ことを表しているのです。」と人類に共通する意思疎通の原点を示されました。

二つ目の「自分を正しく知り、コントロールする力」では、「無理のない目標設定」「よく学び、よく遊べ」「夢は人に伝える」の三点を挙げられました。目標というのは短期的なもの、長期的なものと分けて考えることが大切だとも話されます。その上で担任の先生へのお願いがあり、「帰りの会などで、自分の夢を話すような場面を作って欲しい。人前で自分の目標を話したという事実が本人の意欲につながる。」と、意思決定の重要性を学校側にも求められました。
三つ目の「課題を見極め解決の工夫をする力」は、「原因の追求(失敗は成功の母)」「社員とのコミュニケーション」と提示されました。失敗することを恐れず、そのあとに原因を考えて対策を立てることこそが大切だと生徒の背中を押されました。
最後に四つ目の「働く意義を知り将来を切り拓く力」では、「生活の糧」「社会貢献」「充実感」の三つをキーワードとして挙げられました。生活の糧は、働くということはすなわち生活基盤を確かにするということであり、社会貢献は、社会に役に立っているという実感が大切だと話されます。そして、目標の達成や困難を克服するという充実感が、働く上で将来を見通す力として重要だと生徒たちに伝えられました。何と言っても稼がないことには生活成り立たないし、ある程度生活ができたとしても、充実感がなければ長続きはしません。いわゆる「社会の壁」にぶつかって早期離職する若者が多いのも、この将来を見通せないところに不安や充実感のなさを感じることが原因にあると状況分析を読んだことがあります。しっかりと10年以上一つの仕事を続けていき、その仕事では一流となるまでの努力をしていくことは大切な汎用力育成につながると思います。

学習の最後に長谷川さんから「今日から頑張って欲しいこと」として、「読書」と「家の手伝い」を挙げられました。本に触れる習慣を身に付けて欲しいと言われます。ネット社会になり何でもすぐに答えが見つかり、それを正解と思って行動に繋げていく。それだけに、誤答だったと気付いた時には味わったことのない挫折に陥ることになる人も多い現代です。本というのは自ら手に取り、1ページずつめくっていく中で登場人物の背景を想像し、行動について考える積極的思考が必要になります。スマホに慣れ切った世代には実に面倒な作業になります。しかし、そのような手順を一冊の本に向かい精力を傾けていく過程で想像力や場面対応力などの生きる力を知恵として獲得していくことができます。子どもに「マコチ考えんもんじゃ!」と怒るより「本を読みなさい。」と言い、家庭で読書環境を広げていく方が豊かな人生を送らせる遠くて近い指導になると思います。
長谷川さんの言われる家の手伝いでは、風呂やトイレの掃除という家族の一員であれば当たり前の習慣を身に付けさせることは本当に大切です。学校では清掃の時間がありますが、私は現役教員時代によく感じていたことがあります。「この清掃は家庭で生きているのか」と。流石に現在は、絞った雑巾を二つ折りにして四つん這いになり腰を突き上げて、タッタッタッタッと一直線に拭くような床拭きをさせている学校はほとんどないでしょう。膝を折って手の届く範囲でコの字型に拭かせていると思います。ところが、この拭き方でさえ家庭ではやっていないと思います。ほとんどの家庭では、乾燥モップで拭くか掃除機ではないでしょうか。或いはもはや、ロボット掃除機での自動運転かもしれません。そうなると学校でやっている清掃は無駄な時間なのでしょうか。そういう自問自答を私はよくしたものです。答えは「ノー」です。生活において直接的に役立たなくても体に染み込ませる経験が大切なのです。以前、教え子が卒業し5年後くらいにその親と会った時、その方が私にこう話されました。「家で年末の大掃除をしようとして、高校生の息子に『雑巾を濡らして窓を拭いて。』と頼んだら、息子が『なん言いよっとねお母さん。新聞紙があればいいっちゃが。一方を濡らして窓を拭いて、もう一方の乾いた方で拭き上げるとよ。これ小学生の時に山之内先生から習ったよ。』と自慢げに言うのですよ。」と、笑顔で子どもの成長を喜びながら話されました。経験した地道な作業が生きる力となって生活の中に沁み込んでいくことの大切さを実感をもって教えられた気がしました。それと同じことで、小学生の交通安全教室で「右側通行」を徹底して指導することや、集団で歩行するときに間隔をとって歩くことなどを日本の学校で指導していることが、大災害時に「整然と動く日本人」と称賛される所以ではないかと私は考えています。

長くなりましたが、長谷川さんの仰る「家の手伝い」は皆さんのご家庭でどんどんさせていただきたいです。最近の子どもはとても忙しいです。少年団や習い事、部活や各種試験などで休む暇もないくらいです。しかし、それだからと言って家事について親がすべてを行い、子どもの時間を作ってあげようと余計な配慮をしてしまうと、「家族の一員」を理解しない大人になってしまい、ひいては「生活力のない大人」に育ててしまうのではないかと危惧します。私は4歳の孫と風呂に入る時に、風呂の洗い方の手順を教えています。勿論モップを上手に使うことはできませんし、させると掃除というより遊びに近いのですが孫はフムフムと手順を覚え、また、仕事を与えられる喜びも感じているようです。長谷川さんの仰る「読書」と「手伝い」は、家庭教育のキーワードになること間違いなしです。ぜひ、お友達を巻き込んで「共同実施」されてみてはいかがでしょうか。
これを読んでおられるご家庭に子どもさんがおられましたら、ぜひ家事を話題にしてください。いや、読んでおられるご家庭はすでに、そういう方針を取られていると心配無用かもしれません。また、市内小中学生がいましたら、このような社会人講話「よのなか教室」で「どんな話があった?」と聞いていただきたいと思います。このブログでの記事を読んだことは伏せておいて、「フーン、なるほどね。」と傾聴に注力すると、共通の話題として盛り上がること間違いなしです。
中学生になれば18歳で巣立っていくまであと僅かです。子どもさんが自分の子どもとして近くにいるのも残り数年となります。出て行って寂しくなる前に、自立した家庭生活を送れるよう様々な機会を捉えて会話をし、家族の一員として積み上げていくこと、すなわち「キャリア発達」を促していくことが大人の務めではないかと思います。
長谷川さん、足腰のお悪い状況の中、学校の階段を上り下りさせてしまいましたが、生徒の心に沁みるお話をありがとうございました。
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