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2026.06.03
台風6号では被害はなかったでしょうか。原油高騰に加え、自然災害への対応など多く打撃を受けている方もおられると思います。それでも乗り越えないといけないので厳しいものです。いっときでも忘れられればと、本日は山の話をご提供します。
私はこれまで北アルプスの冬山を中心に、夏も幾度となく訪れました。北アルプスというのは本来飛騨山脈と言われている部分になります。北は糸魚川の親不知から発する栂海(つがみ)新道を経て白馬岳(しろうまだけ)に達し、五龍、鹿島、針ノ木、水晶など名だたる後立山連峰を越えて、南部の名峰槍ヶ岳へと通じます。今「後立山連峰」と言いましたが、その名の通り「前立山連峰」もある訳です。ただ「前」は付かず「立山連峰」と呼んでいます。剱岳に始まり、最高峰の立山(雄山=おやま)を経て、絶景紅葉の五色ヶ原、薬師岳、黒部五郎岳とずらりとこちらも名峰が並んでいます。この二つの連山は三俣蓮華岳で合流し、槍ヶ岳へと繋がります。ちなみに、この二つの合流点である三俣蓮華岳から後立山連峰へ少し入り込んだところに、昭和のスター野口五郎さんの名前の由来である野口五郎岳があります。(失礼、今も現役で歌っておられますね。)

立山は日本三霊山(富士山、白山、立山)の一つであり昔から信仰の山なので、歴史の古い立山が「表」になるということでしょう。西暦701年佐伯有頼が立山を開山し立山信仰が盛んになり、槍ヶ岳は播隆上人が1828年に開山したということからも立山の歴史の古さが伺えます。(立山町周辺には佐伯姓がとても多いです。現在も剱岳周辺の山小屋の御主人は佐伯さんが数人おられます。)
私が初めて登った北アルプスは槍ヶ岳で、その山頂直下には播隆窟という岩屋があり、播隆上人が、この岩窟に48日間も籠って念仏を唱える修行をしたとの歴史を知った時に、この山の持つ歴史と威容を感じ取ったことを今でも覚えています。ただ、当時は初めてのアルプスということで空回りした体力が限界を迎え、この播隆窟を通るころにはヘロヘロになっていたのも事実です。

一方の立山連峰にある剱岳に登ったのはそれから数年後のことでした。そんな北アルプス通いを30数年に渡って続けて来た山屋にとって、北アルプス南部に聳える名峰槍ヶ岳は、難所の北鎌尾根を初め、東鎌尾根、西鎌尾根、そして槍穂高縦走の大キレットへつづく東西南北の中心点、そして記憶の真ん中に位置づいています。

♪「アルプス一万尺、小槍の上で、アルペン踊りをさあ踊りましょ。」と歌われた「小槍」というのは、槍ヶ岳の隣になる岩峰のことを指します。一万尺は約3000mになり、3080mの槍ヶ岳の直下だから一万尺と表していることになります。ここはロッククライミングの要素でしか登れないので限定的な山(岩)と言えましょう。ところがこの小槍の山頂は畳一畳ほどしかないので、アルペン踊りは難しそうです。それでも過去には山頂でダンスをしている(ような)グループもあったので、世の中には物好きがいるということです。♪「アルプス一万二尺、槍の山頂で、アルペン踊りをさあ踊りましょ。」なら、8畳ほどの広い山頂で踊れたのにと、無駄な想像をしました。
下の画像の左側にある大きな岩峰が小槍になります。真ん中にちょこんと突き出している円錐形の岩は孫槍と言われ、画像には見えませんがその上にさらに小さな槍岩があり、それは曾孫槍と言われています。(下の画像は槍ヶ岳山荘側から見たところです。)

さて最近、槍ヶ岳山荘で働いているニノさんという方のブログを見つけました。私も昔山荘でアルバイトをする夢がありましたが実現しませんでした。今思えば、考えすぎなんですよね。「試すことに失敗はない」ので行ってみればよかっただけのことです。だめなら帰ってくることだけだったのに、当時すでに色々考えすぎたのでしょう。私のことはいいですが、そのニノさんが、人からの学び、自分との向き合い方について印象的なことを書かれていましたので引用させていただきます。タイトルは「山の暮らしで感じている事」です。
「スタッフ同士は生活も共にするので、仕事だけではないその人の一面がより色濃く見えるところも、私にとっては興味深く、そこから自分がどう在りたいかなど内省する機会をもらっています。お互いの得意を引き出し合いながら、不得意を補いあいながら共同して暮らす良さがここにはあります。街では生活と仕事は別になりつつありますが、現代社会で失われてきた人間の何か動物的な部分での「補い合う」生活が山小屋にはある気がしています。山にいると自分はちっぽけだなあと感じますし、あがいても自分は自分でしかいられないんだなあとなんだか安心ともあきらめにも似た感情にもなります。と同時に人間のあがいたり、迷ったり、もがく美しさや強さをより鮮烈に感じます。なんていうか、、、そこがいいです。」
先日のブログで書いた「醤油貸して」ではありませんが、「足りない部分を補い合う」気持ちでゆっくりと人生を進めていける。そんな支え合いの生き方が人間らしいというか、穏やかな暮らしに繋がっていくのでしょう。自然の中に身を置くと、人間は素に帰れることが上の文章からも分かります。大自然の中ではちっぽけな人間なんて本当に無力だということを感じます。町場の雑然とした空気の中にいる時に解放されない自分に気付くと、自然の中では余計に人間らしい部分を取り戻せるのかもしれません。
お付き合いありがとうございました。
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