日向市キャリア教育支援センター ブログ

2026.03.23

むかばき

お彼岸の墓参りを済ませ、休みを利用して延岡市にある行縢(むかばき)山に登りました。実に10年ぶりくらいではないかと思います。昔はよく登っていました。冬山のトレーニングも兼ねて40kgの荷物を背負い一日に2往復したことも懐かしい思い出です。

山頂では心地よい風に吹かれ、霞んだ延岡市街地や太平洋と、南方には尾鈴山系、西側には五ヶ瀬方面の九州脊梁山地、その北西にはうっすらと阿蘇の山なみを見渡すことができました。岩の隙間からは、固有種のヒュウガミツバツツジが、ここは自分の縄張りだとばかり鮮やかに咲き誇っていました。

 下山後、帰路に着くと集落の先に神社がありました。鳥居が菜の花畑に囲まれていてなんとも美しい光景です。この神社周辺の舞野町の有志の方々が地区活性化のために毎年菜の花を植えられているそうです。有難いことです。

下舞野神社

 

 行縢と言えば、宿泊学習を思い出された方も多いのではないでしょうか。県北に住んでいれば、ほとんどの小学校5年生で登山を中心にした宿泊学習に参加した経験があるのではないかと思います。昔は中学1年でも実施されていました。登山の苦しさと達成感やキャンドルの集い天体観測工芸教室などが2泊3日の中にプログラムされていて、人生の思い出の一つになっていることでしょう。

 

 現在、宮崎県ではほとんどの中学校で宿泊学習は実施されていないようですが、一部の私立中学校は実施していて、東北の山中にある豪華な施設で3泊4日の英語宿泊研修をする学校もあるようです。やはり中高一貫としてのキャリキュラムの余裕と経済面より内容重視の方向性がなせる業かもしれません。公立の中学校は忙しく余裕がないのが現実なのでしょうか。

それにしても、こういう自然の中に児童生徒を送り込みながら、学級の垣根を越えて学年の絆づくりを目的にした宿泊学習は、人間関係が薄くなってきた今の子どもたちにこそ必要なプログラムではないかと思います。他県では現在も公立中学校の全学校で実施しているところもありますが、一度止めてしまってから復活させるのは簡単ではないでしょう。また、実施するにしても昔とは違い、より多くの配慮が必要になってきた感がします。

 

ところで、忘れもしない約30年前。私が小学5年の担任だった時、一人の児童が行縢(宿泊学習)には行けないと言ってきました。費用が理由のようでした。夕方、私は自宅を訪ねました。父子家庭のその家では、5年の子が台所で洗い物をしながら私を迎えてくれました。お父さんは、周辺が散らばった畳間のテーブル前に座り怪訝な顔で私を見ていました。5歳ほどのがいて、訪問者が嬉しいのか私に飛びついてきました。洗い物をしていた5年生の子がひび割れた手で、少し汚れた茶碗にお茶を注いでもってきてくれました。私はお茶を有難くいただきながら、幼い妹をあやして少し間を置きながら、お父さんと話し始めました。お父さんは家庭の状況などを語ってくれ、私が来た理由も分かっていたので費用の捻出は経済的に無理だと言われました。しかし私はこのままでは引き下がれず、その5年生の子が学校でとても頑張っていること、宿泊学習の目的意味などを熱く語りました。1時間くらいして、お父さんが折れてくれました。「先生がそんなに言うなら分かった。お金はなんとか集めて子どもに持たせます。よろしくお願いします。」と言われ、私は子を持つ親の思いに触れ胸が熱くなりました。

 

 そうやって学級全員が宿泊学習に向かうことができたのを昨日のことのように覚えています。それから10数年が経った時、その子の結婚式に呼ばれました。がんばって来たんだ、本当によかったと思いました。さらに約10年が経ち、今度は私が赴任する学校で、その子が保護者という立場で再会しました。色々あって苦労してきたことが分かりましたが、なんとか子どもたちを真っ当に育てているようで安心しました。私は、教え子の子どもから「先生はお母さんの先生だったんですか?」と言われることが嬉しかったです。

 

行縢という一つの地名には山や神社だけの景観だけではなく、これまで幾千人の人生ドラマまで包含している思い出が詰まっていると改めて思った春の登山でした。

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