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2025.12.01
私はずっと登山をやってきました。登山家というにはおこがましいので山屋の方が似合います。ほかに「岳人」(ガクジン)という呼び方があります。同じネーミングでモンベル社が出版する山岳雑誌があります。岳人という呼び名の場合は何となく洗練された気品すら感じますが、それは私には不釣り合いです。さて、「九州の岳人は久住に始まり久住に終わる」という言葉もあります。ご存じでしょうが、この久住は大分県九重連山の山々を指します。「久住」という場合は名峰(最高峰は隣の中岳1791m)久住山1786mを指します。そして「九重」という場合は、10座以上のピークを持つ一帯の連山を指します。したがって、「久住山」「九重連山」という使われ方をします。郷土の境界や山頂名などを巡っては全国各地で色々な獲得論争があったようです。私も九州の山屋の一人として、まさに登山は久住山から始まりました。春夏秋冬いつ行っても優しく厳しく迎えてくれ、たおやかな山容に包まれている感覚が好きでこの連山にはよく通います。
さて、前置きが長くなりましたが、本日はその九重連山で高校生が活躍をしている話が毎日新聞に掲載されていましたのでお届けします。(抜粋になります)
くじゅう連山(大分県九重町、竹田市)を毎秋、玖珠美山高(玖珠町帆足)の3年生が訪れ、登山道の補修に当たっている。13回目を数える今年も、生徒20人が苦闘しつつ山岳関係団体の協力で、くいとロープを交換。登山客の安全を下支えする。…前身の玖珠農高時代からくじゅうで外来生物の駆除などに取り組み、2012年に豪雨などによる浸食で傷んだ登山道の補修を始めたのがきっかけ。農業などを学ぶ地域産業科の3年生が「ふるさとの自然を守る卒業記念活動」として、ほぼ毎年続けている。牧ノ戸峠から生徒たちが向かったのは、沓掛山に至る途中の登山道。一部区間の古くなったロープと木製のくいを新調するため、一行は新しいくいを背負い、スコップなどを手に、急勾配の登山道を歩いた。山登りに不慣れな生徒からは「きつい」との声も漏れる。
現場に着くと、スコップなどを用いて古いくいの撤去に着手。しかし、くいを倒れにくくするために取り付けられ、土中に埋められた「横木」が、撤去作業を難しくする。山岳関係者から「簡単には抜けない。くいの周りから掘って」と助言され、苦戦しながら掘り進めた。それでも抜けず、つるはしを使ってようやく掘り出した。古いくいを手にした谷崎斡律さん(17)は「ずっしり重い。くいに横木があるのを初めて知った」。新たなくいは、横木をボルトで固定して埋め、さらに大きな木づちで打ち込む。「学校の実習で電気柵を設けた時は専用のくい打ち機を使ったが、それに比べると木づちは重くて操作が難しく、想像よりきつい」と藤井柊平さん(17)。生徒たちは2時間かけて計21本を交換。ロープも張り替えた。古いロープをのこぎりで切って回収した古川釉那さん(18)は「大変だったが、登山客が安全で登りやすくなるのはうれしい」と笑顔を見せた。…毎回同行している山岳関係団体の「九重の自然を守る会」の高橋裕二郎理事長(77)は「本当にありがたい。みんなの活動でくじゅうは守られる」と感謝する。同校農場主任の永楽浩一郎さん(64)は「学校では地域に根ざした教育を目指しており、地元の山は農業につながる根本でもある。自然や環境に関わる活動を、今後もできる限り続けたい」と話した。
沓掛山 HP記事より
記事を読んで、久住登山をされる方なら場所について鮮明に思い出すことができるのではないでしょうか。牧ノ戸峠からきついセメントの坂を約20分上ったところの右側に展望所があります。そこから少しの岩稜帯を抜ける所にあるのが沓掛山となります。昔まだ積雪量が多い頃には、高さ5mほどの岩でさえ雪に埋もれることがありました。その角度のある岩と岩の間の雪面に動物の足跡がくっきりと残っていたこを思い出します。この沓掛山の一帯を玖珠美山高校の生徒が毎年、登山道整備を続けてくれていたことは知りませんでした。本当に有難いことです。木道やロープは人工物なので風雨に晒されたり、人が通過することで劣化が進みます。何気なく通過する、あるいは、登山なのでともすれば自分のきつさだけを考えて足元の登山道の整備状況を考えずに通過してしまうことがあるものです。こういった地元の方の努力によって環境が維持されていることを考えられる登山者でありたいものです。
生徒古川さんの「登山客が安全で登りやすくなるのはうれしい。」や高橋理事長の「みんなの活動でくじゅうは守られる」という言葉は、人に対する温かな営みを表していると思いました。また、農場主任の永楽さんは「学校では地域に根ざした教育を目指しており、地元の山は農業につながる根本でもある。」と話され、地域の中の学校であることや、自然は必ず自分の生活と結びついていることを自覚して生活することの大切さを話されていると感じました。
サーフィンにもローカリズムはありますが、登山のローカリズムはこのような発信がないかぎり誰が維持しているのか大変分かりづらいのが現状です。これまでも感謝しながら登山をさせていただいていましたし、自分で「一山一善」と称して必ずゴミをワンハンドくらいは拾うようにしてきましたが、さらに各地の登山では地元の人の思いを考えられる山屋でありたいと思います。

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