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2025.12.03
初めての海外旅行はカナダでした。40歳になってからで、それも登山のためです。舞い上がってトランジット(正確にはトランスファー)をしたシアトル空港(シアトル・タコマ空港)では見るものすべてが新しく異文化を全身に受け止めた感じがしました。
山岳会のメンバー5人で当時のノースウエスト航空を利用し、シアトル空港では2時間の乗り継ぎということでした。当時のノースウエスト航空は遅延することで有名だったそうですが、私はそのことが分かっていないのでリーダーにお任せ状態です。リーダーは海外旅行に慣れているので、知人を介して2時間以内の乗り継ぎ移動もスムーズにいくように手配していました。当時も巨大なシアトル空港では地下鉄が移動に使われますが、その行き方は慣れないと上手く次の搭乗口まで行けないというのです。それで、現地移動案内スタッフを雇うという段取りになりました。そんなことができるのかと私は驚きましたが、シアトル空港に到着してみて、なるほどこれは大きな空港だわと、どこが何やらさっぱり分からない状態でした。
入国審査と税関では、5人で事前学習を繰り返していました。同行者の一人の女性は「ハウメニーって聞こえたらテンデイズ。パーパスって聞こえたらサイトシーイングって言う。」とブツブツずっと繰り返していました。私は「観光でいいのか?登山じゃないのか?」などと考えましたが右へならえと決め込みました。彼女は「結局一緒のイミグレーション(入国審査)のゲートに行けばいいとよね。」と彼女が言ったすぐ後に、リーダーから「時間がかかるから少ない列に全員ばらけて。」と指示があり、5人皆がバラバラにゲートに入ってしまいました。私も一瞬不安になりましたが、先ほどの彼女の「なんでばらけると~」というとても不安な顔は今でも忘れません。それでも皆無事に入国審査を終えて揃いました。彼女に「どうやった?」と聞くと「必死にテンデイズとサイトシーイングを練習していたら、いきなり『何日?目的は?』って日本語で聞くっちゃから!私が英語が話せんて見抜いたっちゃろか。」と憤っていました。
入国審査を終えロビーに出るとすぐに、シアトル在住の女性空港案内人が小旗を持ってにこやかに待っていました。彼女の後をついて導かれるままに次から次へと地下鉄を乗り継ぎ、あっという間に乗り継ぎ便の待つ搭乗口に着きました。さすが地元で詳しいなあと感動したものです。

現在のシアトル空港はX字型にコンコースが配置され分かりやすい
おかげで時間に余裕ができたので待合室でのんびりしていると、その案内人が「あそこに皆さんが行列を作っているのがシアトル発祥のスターバックスコーヒーです。今度東京にも1号店がオープンするそうですね。」と言われ、聞いたこともないコーヒー店の名前で分からなかったのですが、コーヒーは好きだし時間はまだあるので、そのブースのある行列に並んでみることにしました。
皆2人ずつ並んで私のところまで10組以上いたと思います。列は遅々として進みません。それでも焦らず少しずつ前に進んでいると、付き添ってくれた案内人がこう言いました。「こちらの人は待つことが苦痛じゃないんです。むしろ待つことを楽しんでいるんです。」と。ホーッ!これには頭をガーンと金槌で殴られた感じがしました。
私の順番が4番手くらいになったとき、前の人たちの様子を見ていると、先頭の人はショップのスタッフと色々話をしながらメニューを選んでいるようでした。これは分かります。ですが、2番手の2人は、まったくショップのブースの方を見ずに、2人で仲良くペチャクチャと話をしていました。すぐにその人たちの順番が来ました。来たというか、ショップスタッフに「ハーイ次の方!」と言われてショップを向き直った感じです。それからその2人は「これは何?どんな味?お薦めは?」などと、色々と質問してはにこやかに笑いながら決めあぐねているようでした。スタッフは行列が長く続いていることもちろん分かっているようですが、その2人に温かな笑顔で対応しながら、一つ一つの質問に丁寧に答えていました。
日本人なら(いや私なら)、順番が3番手くらいになりメニューが見える位置に来た時には、何にしようかと色々考えて決めておくことが多いのではないかと思います。それは、楽しみだから早く求めたい期待や、後ろの人に悪いからという配慮が働いて、行動を早くしようという動きに出てしまうのではないかと思ったところです。
「待つことが苦痛ではない。」「待つことを楽しむ。」 そしてスタッフも「後ろを気にせず目の前の相手に尽くす。」 これは、初の海外旅行が遠征登山であったにもかかわらず、自分の在り方に大きく影響し登山よりも大きな収穫だったような気がします。カナディアンロッキーの雄大な自然の中で登山できたことは大変大きな喜びでしたが、異文化から自分の行動の襟を正すことを学んだことを、授業の隙間に子どもたちによく話していました。もちろん、日本人の後ろの人に気を遣うという行動も美徳ではあると思っています。ですが私はその登山から帰国後、コンビニやほかの場所で行列ができていても気にせず並び、前の人やスタッフが慌てている様子に出会うと「ゆっくりでいいです。」と素知らぬ態度でいようとしたり、前の人に詰めすぎないようにしたりすることができるようになりました。

現在のシアトル空港「スタバ」はきちんとした店構え
海外で自分の在り方を学べたという話でしたが、海外だからということではないと思います。国内でも地元でも「相手への思いやり」や「おもてなしの心」などは意識していれば沢山学ぶ機会に毎日出会うと思われます。この遠征でのお話には続きがありますので、今日はここで総括せずに、ロッキー登山遠征で学んだ「待つことを楽しむ国民性」について、次回に送ります。
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