日向市キャリア教育支援センター ブログ

2025年11月

2025.11.06

よのなか教室~細島小学校

 

 昨日11月5日午後、細島小学校にてよのなか教室の講話がありました。細島小の5・6年生が3つのグループに分かれて3名の方の講話を聞くというスタイルの学習でした。

 講師は日向市役所市民課瀧山春奈さん、日向市消防署北住優佳さん漁師朝倉莉久さんの3名です。

 瀧山さんは、趣味のゲームも、失敗の原因や解決策を考えるという点では今の仕事に繋がると子供たちに分かりやすい導入から始められました。今の仕事に就いたのは、お父さんが社会福祉の仕事をされていて一緒にボランティア活動に参加する中で、人の役に立ちたいと思うようになったとのことです。また、小学生の頃の転校経験では「自分の殻を破ってみよう」と意識を変えたという一歩を踏み出す勇気という視点でも話をされていました。

 漁師の朝倉さんは、魚の水揚げをする父の背中を見て自分も将来漁師になりたいと思っておられたそうですが、部活として熱中していたラグビーとの二者択一の場面にぶつかった時に、地域の行事に参加して地域で働くことの良さを知ってから改めて漁師の道に進む決意をしたと話しておられました。夢を追う時、他にも希望があった時は一方を捨てるという選択をすることも出てくるだろうが、自分が支えられたことを思い出して決断するとよいと思う、そのためにも、今地域でできる挨拶などは積極的にしてほしいとエールを送られました。なかなか深い話です。

 消防士の北住さんは、救急対応や消火活動、指令室担当など消防署といっても様々な仕事を経験しているそうで、日向の良さを考えるようになってから、直接市民の皆さんに駆けつけられる仕事を選んだとのことでした。大きな意識の転換点は熊本地震だったそうです。児童から「火事の時大変なことは?」と聞かれ「木造火災は燃え続けるのが大変で、やけどをする場合もあるし、ホースはとても重い。」と具体的にお話をしてくださいました。実物の消防服を触らせていただいた児童はこんな重い服を着ているのかと驚いた様子でした。

 それぞれの講話が終わり、全体集合をした場所で6年生が感想を話してくれました。「この3名の方は仕事をとても頑張っておられることが分かりました。私も人を助ける仕事をして尊敬される人間になりたいです。」と述べ、この学習が新たな自分を歩みだすきっかけになったようで、細島小の子どもたちは良い学習ができたと、こちらまで嬉しくなりました。

2025.11.05

「働く」が見える日向の本

 日向市ではキャリア教育の教材として「2025年度版 日向市のいろんな産業 いろんな会社 いろんな仕」という冊子が中学2年生を対象に全員に配布されています。これには、日向市内(一部門川含む)の事業所ではどのような事業を行っているのか、どんなものづくりを行っているのか、そこで働く人たちはどんな願いをもっているかなどが読み取れるように構成されています。各ページにはQRコードが付けられていて、各事業所のHPへリンクしているだけでなく、その職場で働いている方の話や仕事の紹介動画も見られるようにしてあります。いくつかの興味ある事業所の概要を読んでおくことは実際の深い学びに繋がることは間違いありません。事前学習のみではなく、事後学習としても、生徒が実際にタブレットQRコードを読み取りHPや動画を見れば、より具体的に各事業所での仕事を詳しく知ることができるはずです。まずは学校での学習にご活用いただきたいと思います。

 

小学校にも数冊配布してありますので、児童生徒の皆さんが、職業講話や社会体験学習を行う際には「今の自分にできること、足りないこと」を客観視し、学習の前に「何を学び取りたいか」を明確にした上で体験学習に臨むと取組が変わるのではないでしょうか。学習後に「今から自分にできることは何か」「これから自分はどんなことを頑張るか」という問いに対する自分の生き方の方向付けができるのではないかと期待します。各事業所様のご協力のもと、藤屋印刷様が多大な力を注ぎ込み日向の子ども達のために作成されておりますので積極的なご利用をお願いいたします。

 

2025.11.04

本の話「分人主義」

 昨日11月3日(月)は五十猛神社大祭が催されました。若干の肌寒さはありましたが秋晴れのもと、財光寺地区はお祭り一色になりました。午後のパレードには各地区の仮装隊も登場することはよく知られていますが、午前中はそれぞれの地区を回っていることはご存じでしょうか。高齢者施設や支援施設を含め、地区内にある商店や個人宅の前で踊りを披露しました。午後のパレードは旧道を封鎖し沿道にはたくさんのお客さんが来られ大変な盛り上がりでした。奉賛会や各地区代表の皆さん、ひょっとこ踊りの厄年の方々、警備の方、その他大勢の方々が関わりながら地区の行事が実施されていることを改めて感じる一日となりました。パレードの出発点となっている財光寺南小学校には毎年お世話になっております。皆さん一日お疲れさまでした。

 

 さて、祭りの話が長くなりましたが、本日は読書の秋にちなんで最近読んだ本の中から一冊紹介します。平野啓一郎著『私とは何か』~「個人」から「分人」へ ~ です。この方が言うには、「分人主義とは、…『個人』に対して『分人』とは、対人関係ごと、環境ごとに分化した、異なる人格のことです。中心に一つだけ『本当の自分』を認めるのではなく、それら複数の人格(分人)すべてを『本当の自分』だと捉える考え方を『分人主義』と定義しています。」だそうです。内容を途中省略しながら少し紹介します。

手紙を届けるのが得意な人がいるから、郵便局が作られたのではなく、手紙のやりとりが必要だから、郵便局が作られ、そこで働く人が求められているのである。そして、職業の多様性は、個性の多様性と比べて遥かに限定的であり、量的にも限界がある。…(略)十年前のあなたと、今のあなたが違うとすれば、それは、つきあう人が変わり、読む本や住む場所が変わり、分人の構成比率が変化したからである。…個性とは、決して生まれつきの、生涯不変のものではない。…(略)私は、小学生のころは何とも思わなかったのに、中学生になると、母親が運動会を見物に来ることが、急にすごくイヤになった。私だけではない。同級生は大体みんなそう言っていた。私は、親と喋っているところを友人に見られるのがイヤだったし、級友と必死で騎馬戦を戦っているところなどを、親に見られるのはもっとイヤだった。私は、それをただ、思春期になって親離れを始めたからだと考えていた。しかし、この問題も、むしろ、分人に着目して考えた方が腑に落ちる気がする。私はやはり、親に対する分人友達同士の分人とが、混ざってしまうことを嫌っていたのだろう。友達向けに目いっぱい分人化しようとしても、どこかで親に見られているという意識が、それを邪魔してしまう。帰宅後、「家では見せないような表情を見た」などと言われたくない気持ちがあった。別段、年頃になって、親を毛嫌いし始めたというわけではなかったのだ。(略)2010年にチリの鉱山で、33人の作業員が坑内に閉じ込められるという落盤事故が起きた。救出までの数カ月間、坑内の作業員は、家族と電話で話せるようになっていたが、そのことが、彼らのストレス軽減に大きく寄与した。これは、閉じ込められた工員仲間との分人だけでなく、家族との分人も生きられるようにするための配慮だった。もしそうした外部との連絡手段が確保されなかったなら、坑内では凄惨な状況が発生していたかもしれない。…(略)人間は、たった一度しかない人生の中で、出来ればいろんな自分を生きたい。

 

「個人」ではなく「分人」。一つの個人という捉え方より、個人はさらに多様な側面を持つ「分人」に分けられるという考え方は面白いと思いました。会社での自分(分人)や家庭での顔、学校での顔、友人間での顔と人それぞれの付き合い方での自分という人格を変化させながら上手く生きるということなのでしょうか。「人間」とは「人」と「人」の「間」を生きる者というどこかで聞いた言葉を思い出しました。興味のある方は秋の夜長に本書を読まれてはいかがでしょうか。それともシングルモルトを片手にマイルス・デイビスに耳を傾ける、そちらもいいですね。

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