日向市キャリア教育支援センター ブログ

2025.11.11

「MAPの原理」~学びにリアリティを~

 今日は少し硬い話になりますが、これからの時代に益々求められる探究的な学習についてのお話になります。

 学校におけるキャリア教育は特別活動を中核としながら各教科、道徳、総合的な学習(探究:高校)の時間という様々な教育活動を通じて基礎的・汎用的能力を育成することになっています。その中で特に小中学校では総合的な学習の時間を中心に探究的な見方・考え方で課題解決力を養うように設定してあります。学習指導要領では、「探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成すること」を目指すのが小中高を通して一貫しています。高校ではここに「自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し」という内容が加わることになります。「自己の在り方生き方」は高校での目標ではないか、ということですが、平成30年度には文科省は「将来の在り方・生き方を主体的に考えられる若者を育むキャリア教育推進」として小中高の体系的なキャリ教育を推進する方向を示しています。つまり、日向市のキャリ教育支援事業である「よのなか教室」や「よのなか挑戦」で目指す「自己の在り方・生き方を問い、生き抜く力を育む」という方向性は正しい方向であると言えます。

 そこで本日は、総合的な学習の時間では探究的な見方・考え方をきちんと育てているのか、児童生徒が「何かよくわからないことをしている」とは感じていないか、つまり学びにリアリティがあるかという点について、教育ジャーナリストである中曽根陽子氏の記事「浅いレベルの調べ学習で終わっていないか」をお知らせしたいと思います。

 

探究の時間は課題に向きあい、力をつける最善の機会のはずですが、求められる要求が高まる中、教員の負荷も増しており、頭を悩ましている先生も多いのではないでしょうか。そんな中、単なる調べ学習に陥りやすい探究学習が、「グローバル視点」と「問いを立てる力」に確実に結びつく、学びに変わる探究メソッドと情報ツールがあるというので、取材をしました。今回話を聞いたのは、探究メソッドを作った慶應義塾大学名誉教授の田中茂範氏と情報ツールRuleWatcher edu.を作ったオシンテックの代表小田真人氏。そして、このプログラムを実践している麗澤中学・高等学校の瀧村尚也氏です。現状の探究活動がうまくいかない2つの理由について慶應義塾大学名誉教授の田中茂範氏は「今の日本の探究プログラムの課題はメソッドがないこと、そして評価方法が明確でないことだ」と言います。その結果、学校や業者が用意したプログラムをこなすだけに終わっていたり、単なる調べ学習になっていたりするケースも決して少なくありません。実際、ある学校で、探究の時間は何をしているのかという質問に、「何かよくわからないことをしている」と答えた生徒がいました。本来、探究学習は「日常生活や社会生活に目を向け、生徒が自ら課題を設定する」ということを目標にしているのですが、そこに至るまでの適切なサポートがないと、浅いレベルの調べ学習で終わってしまいかねないのが現実です。しかし、正解を教える教育に慣れている教員にとって、正解がない授業を設計し評価まで行うのは、なかなか簡単ではありません。メソッドは次の4段階。… 1 現状を知る 2 物事の捉え方・考え方を学ぶ 3 探究活動のしかたを学ぶ  4 自分の探究(研究)を行う 「何が起きているか?」「どのような状況か?」といった記述的問いで現状を視察し、「なぜそうなるのか?」「どのような要因が関与しているか?」といった分析的問いで原因を掘り下げ、「他の現象とどう関連するか?」「全体としてどう理解すべきか?」といった統合的問いで、枝を広げ、つながりを発見し、時間の流れを理解できる… 田中氏は、「この問いは、どんなテーマにも共通して使えるし、物事を多面的に見る思考方法が身に付く」と言います。

 

そこで、生徒が社会の現状を知るツール情報ツールとして、オシンテックの代表 小田真人氏が作ったRuleWatcher edu.を紹介しています。これは「政府やNGO/シンクタンク/国際機関の発信情報を一元化 」した情報分析で登録が必要なアプリになりますが、生徒が興味を持った情報にアクセスすることで次々に新しい情報と出会い、最終的に自分の最も興味のある問題にたどり着くという情報ツールになります(小学生には難しいですが)。例えば、「ある生徒は、最初に入れたバナナというキーワードからウォッチしていき、最終的にアフリカの貧困地域に関する記事に辿り着き、世界の貧困問題に関心を持ちました。」というような具合になります。そして、これを学校教育に取り入れたのが、麗澤中学・高等学校の瀧村尚也氏になりますが、内容は長くなるので省略して紹介します。

麗澤中学・高等学校の瀧村尚也氏によると、子どもたちは年齢が上がれば上がるほど、これをすれば正解だということをキャッチし、先生の期待に応えようとするそうです。それで良い評価を受けると、また正解探しの悪循環が生まれてしまう。しかし、それでは自ら考える力は身に付かないし、AIの出してきた答えを鵜呑みにする人を育成することになってしまいかねません。「本来探究とは、自分が気になって仕方ないことを探す旅路だと思っていますが、生徒たちはちょっとした情報との出会いで目が輝く瞬間があります。そんな生徒の輝く瞬間を見ていくのが教員にとっても喜びです」と瀧村氏。やはりいかに自分ごと化できるかが、探究活動成功のカギのようです。大切なのは、学びにリアリティがあるかどうか。田中氏は、「学びにリアリティがあるかどうかが欠かせない」と言います。生徒にとって意味があるか(Meaningful)。嘘っぽくないか(Authentic)。実感を持って問題を受け止められるか(Personal)。この頭文字をとったMAPの原理が、教育の導きの糸になるのです。この機会に、現場の先生も、今やっていることが、生徒にとってリアリティのある活動になっているかを見直してみてはいかがでしょうか。…生成AIの活用が当たり前になった今、人間の知的作業は自動化され、残る人間の価値は多次元で考える思考能力だと言われていますが、それによって人々の共感を呼び起こすような選択ができるかどうかが問われます。

 

私も以前理科の授業をしながら「意味・真実・実感」という学びのリアリティは追究していたつもりですが、児童生徒の認識とはかけ離れていたのかと振り返ってしまいます。今日のこの時間の学習にはどんなリアリティがあるのか、この学びが将来にどう繋がるのか、毎時間意識する授業を目指したいものです。

【参考】

 

 

 

 

 

 

 

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