日向市キャリア教育支援センター ブログ

2025.10.15

ホームスクーリング

 以前、厳冬期にアラスカのフェアバンクスを訪れました。その珍道中のお話はまたいつかお知らせしたいと思います。3か所目の宿泊地であるゲストハウスでの最後の夜に、オーナーが自分の友達である日本人妻ヨシさん(仮名)ご夫妻を食事に呼び、私もご一緒させていただきました。というより、私のためにオーナーがヨシさんを呼んでくれたようでした。ご主人はヨシさんのことを「ビッグマム」と呼んでいました。ヨシさんご夫妻には6人のお子さんがおられ、現在上2人が大学生で、すべての子どもさんを高校まで自宅で学習を教えてこられた(残り4人は現在も教え中)そうです。これを「ホームスクール」と呼んでおられました。私はこのホームスクールにとても興味が湧いたので色々尋ねました。「それはなかなか大変ですね」と返すと、「いいえ、大変なことはなかったですねえ。上2人は大学に入ってから今、大量の課題にヒーヒー言っています。」とおっしゃいます。 

ご存じのようにアメリカでの大学進学は(学校にもよりますが)割と容易に入学はできるそうです。ホームスクールでは子ども達に課題を提示してそれをさせているとのことでした。内容について詳しく聞きたかったのですが、酔いが回っていたことに加えて、オーナーやヨシさんのご主人との様々な話にも花が咲いてしまい、詳細を聞き出すところまで辿り着けませんでした。

 私は日本国内におけるホームスクーリングの知識がなかったので調べてみました。日本では学校教育法という法律が厳然とあるのでホームスクーリングは制度としては認められていないようです。全米のある調査機関のデータ(2021)によると、ホームスクーリングで学ぶアメリカの子どもは6.73%で15人に1人という計算になるそうです。ホームスクーリングで育った有名人には、アメリカ合衆国大統領ジョージ・ワシントン、セオドア・ルーズベルト、エイブラハム・リンカーン、また発明家のトーマス・エジソン、アレクサンダー・グラハム・ベル(電話)、科学者ではアインシュタイン、ニュートン、キュリー夫人、実業家のカーネル・サンダース、本田宗一郎と数多くいたことに驚きました。

ここまで聞くと、随分魅力的なホームスクーリングに聞こえますが、やはり長短それぞれあるようです。メリットとしては、子どものペースで学習を進めることができるとか、いじめに遭うことがない、自立心が育ちやすいなどが挙げられます。デメリットして、社会とのつながりが減少しがちになるとか、保護者の学習指導力で差が出やすい、同年代の子どもとの関係性が作れない、進学先の学校の理解が得られにくいなどがあります。

学校に行けない子どもの居場所としてのフリースクールとは違い、学校という枠にとらわれないホームスクールという存在は、今後日本でも広がるのでしょうか。時代の流れに応じて、最近では、教育委員会や学校長の「一定の要件」の判断のもとにホームスクールでの学習を出席とみなすという動きも少しはあるようです。国内でも不登校対策を軸とした「学びの多様化学校」がぽつぽつと設立されてきました。ホームスクーリングはそれを飛び越えて自宅で親が役割を果たすというものですから、選択の幅は一気に広がります。ヨシさんのように6人それぞれを12年間見ていくというのは、やはり「ビッグマム」の仕事ではないかとその時そう感じました。

 一人の人間が自分の人生を歩んでいく際に、どのような学びを選択して(創って)いくか、本人がしっかりと考え意思決定できるような過程、それがまさにキャリアを形づくるということなのではないかとアラスカ以降深く考えるこの頃です。

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